全球観察

全世界の様々なトレンドを記録していきます。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

書評『新しい隆盛のための礎石 下』

こちらの続きです。 こちらで紹介されている中国やイギリスや台湾やアメリカでも不動産価格の高騰・郊外の衰退などはありそうなので、所有権法制だけの問題なのかという気はしてきますが、色々と興味深かったです。 新しい隆盛のための礎石―土地は所有から利…

書評『新しい隆盛のための礎石 上』

『土地は公共財』という本が面白かったので、国民経済計算周りや各国の土地制度の深堀りが書いたありそうなこの本を読んでみました。 同じことが何回も書いてある、「土地を公有化するべき」という結論が唐突に何回も出てくる、と元大蔵官僚の書いた文章とし…

書評『日本の借地』

非常に面白い本でした。 以下メモです: ・1948年頃の借地率は70%前後だった。横浜や函館などの新興都市、東京区部のような大名屋敷跡地が借地率が高かった。戦後はどの都市でも下落。 ・明治10年~45年までの物価の影響を取り除いた平均地価上昇率は9%。1955…

書評『ドイツの家と町並み図鑑』

非常に楽しい本でした。著者たちのYouTube動画も参考になりました。 一方で、外観の紹介はお腹いっぱいになり始めているので、「何故それが維持できるのか」「何故それが引き継がれているのか」の法律・税制・政治制度・経済制度・都市計画・価値観なども知…

書評『ジェイコブズ対モーゼス: ニューヨーク都市計画をめぐる闘い』

翻訳がやや読み辛かったですが、面白い本でした。 モーゼスもジェイコブスもどちらの議論も面白かったですが、都市計画の議論をする際にどちらが正しいかではなく、正しい議論の手続きが出来ているのか、ということが重要に感じました。 ワシントンスクエア…

書評『住宅建築文献集成 第11巻』

渡辺財閥の大船田園都市構想と東急の田園都市に関する案内文章などが収録されています。 両方ともちょっとポエムっぽいのですが、結構面白かったです。 当時の都心部は、工場公害・下水の臭いなどもあり住みにくそうであったことが垣間見られます。 東急の田…

書評『日本の都市のなにが問題か』

アメリカの住宅ローンはノンリコースローンである、というような記述があったりしましたが経済学の観点からの不動産市場への提言に関して、色々と参考になりました。 ニューヨークの昼夜人口比率が概ね100%であり、丸の内エリアは2000%程度である点などが紹…

書評『工場立地と都市計画』

非常に面白い本でした。 読後感としては ・日本の都市の形成のされ方が行政の計画というよりは地域住民の区画整理に依存するところが多い ・土地の利活用、国土リソースの利活用という観点から中途半端なことをしている ・工場立地でさえ場当たり的に決まる…

書評『土地は公共財』

1996年に出版された大蔵省理財局出身・世界銀行理事という方の土地公有論でした。なかなか興味深かったです。 以下の文章が印象的でした(p243) 「私はよく外国を旅行するが、何となく日本の都市や町や村が美観に欠け、雑然としてダラシなく目に映るのは、日…

書評『都市郊外のジェンダー地理学』

ちょっと読みにくい本でした。 東京の都市郊外型の都市の構造や自治体財政が、ある時代のジェンダー観を再生産せざるを得なそうな雰囲気は伝わりました。 多摩市桜ヶ丘は、もともと京王電鉄の経営陣が住むような高級住宅街を志向してつくられたなか(1956年~1…

書評『都市と土地の理論』

1992年の段階で日本の都市計画・土地税制などを批判的に分析した本です。 個人的には、ちょっと読みにくいかなという気がしました。多分その読み辛さは、日本の土地の問題を一面的に見て、外国の制度の方が良い、みたいな論調だからだと思います。あと、都心…

書評『郊外の20世紀』

非常に面白い本でした。 ・1907年頃の「観音林」以来、郊外に商品として供給された住宅地は継承に苦しんでいる。住環境は高確率で劣化している。 ・戦前の郊外住宅地は「健康」がテーマであったとも言える。ただ、鉄道会社主導であったりと、結局は周辺での…

書評『近代日本の郊外住宅地』

非常に面白い本でした。 大宮の「盆栽村」に見られる職住近接的試みなどは今一番面白いのではないでしょうか。 「満鉄の社宅」「朝鮮銀行の社宅」など外国で良質な住宅街を作る能力があったのも意外でした。 これを見ると兵庫の「六麓荘町」以外は今では住環…

書評『会計の日本史』

同じ著者の土地に着目した日本史 を先に読んでいたためか、結構面白く読めました。 ・金銀銅の3貨制は、それぞれの交換比率は異なったが、奇しくもヨーロッパと同じであった。 ・中井家帳簿など江戸時代には複式簿記のような会計方法があった。 ・職業の世襲…

書評『地価はなぜ暴騰するか』

1987年に出版された日本の地価に関する小さな冊子です。 日本の民法が土地所有権主義の法体系で土地利用権主義の法体系ではないことが遠因であるとのことです。 著者が住まれていた御殿山エリアの1万坪の緑地が突然森ビルの高層ビル計画となってしまった点に…

書評『限界ニュータウン』

戦後に、東京中心部から60kmぐらい離れた郊外で、小規模な開発業者が雑に宅地分譲した「限界ニュータウン」の今に関する本です。 限界ニュータウン 荒廃する超郊外の分譲地 作者:吉川 祐介 太郎次郎社エディタス Amazon 60kmぐらい離れていると車で90分、電…

書評『東京 (世界の都市の物語)』

少し面白い東京の見方という感じの本でした。観点は面白いと思うのですが、東京で進む開発を止めるほどの力にはならないかなという気はしました。記号っぽいというか祭りやイベントが多いというか実際の生活とはあんまり関係ないというか。 東京 (世界の都市…

書評『鉄道と街道の深い関係』

東京エリアの鉄道の発達史に関して今の所一番まとまっていてわかりやすい本な気がしました。地形、既存の街道、当時の経済活動などを含めて幅広く理解出来ました。 地形と歴史で読み解く 鉄道と街道の深い関係 東京周辺 作者:内田宗治 実業之日本社 Amazon

書評『日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】』

非常に面白い本でした。 推理小説風な内容なので、以下ネタバレ含みますがメモです。 #############ネタバレ注意##################### ############################################ メモ: ・信長が安土に城を築いたのは、この場所が交通の要衝であるなか…

書評『郊外住宅地の系譜』

戦前の東京の郊外住宅地がこんなにもたくさんあり、こんなにも素敵であるとは知りませんでした(戦後の郊外住宅地とは対照的です)。一方で、そうした郊外住宅地の魅力は必ずしも戦後そして今には引き継がれませんでした。もちろんこれらの住宅地は依然として…

書評『未来都市はムラに近似する』

結構面白い本でした。建築家の方は何でこんなにコミュニティとかコモンズとかを作りたがるんですかね。現代の住宅が要塞化していて都市が殺風景なのが違和感あるからなのでしょうか。 集落から都市に移行する過程で、監視という機能が空間に要請されたり(ナ…

書評『都市空間の明治維新』

前回は大阪の町人街が明治維新以降どのように変容したかに関する本を読みましたが、今回は東京の武家街に関する本です。 まず江戸末期から明治初期までの土地所有権の変動の分析の際に資料が少なくがここまで苦戦するものなのだということにビックリしました…

書評『都市の展開と土地所有』

大阪の町人街である北船場の土地の所有権が江戸末期からバブル期前までにどのように変遷したか分析した本です。若干読み辛かったですが、なかなか興味深い本でした。 ・明治期の地租改正は所有権の再確認でありそこまで変動はなかった ・1930年代の御堂筋拡…

書評『街並みの形成 』

戦後に関東首都圏で作られた郊外住宅街の紹介です。 ここに出てくるような街は、こちらの街並みデータベースにあったり、 https://www.machinami.or.jp/pages/machinami_search/search_japanese.php 何らかの景観やデザインに関する賞を取得している場合が多…

書評『住宅という考え方』

工業製品としての「住宅」がどのように生まれ発展したのかを面白く紹介しつつ、「住宅」の価値は工業製品としての価値ではなくそこでどのような「生活」があるかなのではないか、そんなことを考えさせてくれるような本でした。 それにしても、住宅はどうした…

書評『世界の都市の物語 ニューヨーク』

ある一つの街が発展する流れをつかめる本でした。特に、文化面の記載が強い気がしました。 それにしても富が蓄積されて行きそれが更なる魅力を生み更に人を吸引し更に富が蓄積されていく過程は不思議でした。 そもそもオランダ人はなぜこの場所にこだわった…

書評『都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代』

公共空間のモール化というような本を前回読みましたが、そのような議論をより具体的に事実ベースで論じているような本でした。いろいろな事例があり参考になるのですが、考察というよりは事例紹介という感じはあるかもしれません。 ちなみに、1977年竣工のパ…

書評『ショッピングモールから考える』

最近は駅・空港・病院・図書館などの「公共空間」がモール化しているのでは、という観点から、消費空間としてのショッピングモールという議論を超えた、いろいろなトピックがあり面白かったです。 ・玉川高島屋の創業は1969 年。日本のショッピングモールの…

書評『郊外はこれからどうなる?』

都市の企画開発のマーケティング手法、東京の郊外発展の沿革、アメリカの郊外開発、などを知れる良い本でした。 p213のコルビジュエの未来的な「輝く都市」ではなく「古くて味のある都市」への需要というのは興味深いトレンドだと思います。 郊外化と職住分…

書評『日本人と不動産』

日本の不動産に関するトピックがある程度まとめられており、そこそこ楽しめた本でした。 ・1881年の地租改正時に全国の地租4900万円のうち98%は「村」。200市街地は2%(p130)。 ・1920年の市部面積割合は0.4%、市部人口割合18%だった。1940年の市部面積割合は…