全球観察

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書評『新しい隆盛のための礎石 上』

『土地は公共財』という本が面白かったので、国民経済計算周りや各国の土地制度の深堀りが書いたありそうなこの本を読んでみました。

同じことが何回も書いてある、「土地を公有化するべき」という結論が唐突に何回も出てくる、と元大蔵官僚の書いた文章としては雑なところもありましたが、やはり結構面白かったです。

 

以下メモです:

・地租改正で、無償で土地に対する私権の設定を行い、評価額の3%を金納させることを定めた。私権の設定により土地売買が可能になった。これは日本古来の土地制度を根本的に変えたが、対外的には税制を変えた旨の説明をしていた

・我妻民法の考え方「私人の創意に基づいて財貨の独占的利用をさせることが最も効率的であり、同時に又公共の福祉を増進させることになる」 

・ただ、明治29年民法制定前の、明治5年「土地永代売買解禁」と明治6年地租改正条例」に実質的に日本の土地制度は決められた。民法は追認的な適用。

・地租は税収の9割ほどを占めていたが、明治30年には4割程度に。

・明治初年のリスクマネーは国家が出した。その後払い下げ。銀行はリスクマネーに向かわず、不動産に。p45

・明治の毎年の地価上昇率は5~9%ぐらい? 第一次大戦後の1917~1919年の地価上昇率は12~59%程度。沢山の成金

・大正15年に大蔵省が金融制度調査会を設立したときに、当時の日本の銀行業は「不動産銀行」なのでは、という嘆きがあったらしい。

・都市化によるキャピタルゲインは民間に、社会資本財政負担は政府と自治体というパターンの形成

・日本人は財政に対する過度な依存症(タカり根性)がある p222

・バブル期の土地投機は93SNAで考えると「土地の実質保有利得は中立保有利得の9.5~24.5倍」だった p153

・平成3年~平成12年の国民経済計算調整勘定における資産変動はマイナス1048兆円。毎年、平均100兆円の資産価値の下落はGDP500兆円程度の経済活動の20%。

・同期間に土地は741兆円の減少、株式は91兆円の減少。家計部門はそれぞれ、404兆円の減少、17兆円の減少。10年間で、家計一人当たり400万円ぐらいの資産を失った? 土地の値下がりが家計に一番の重圧 p166

・土地と株式の激しい変動が、有効需要創出を不安定にし、過剰な設備投資・過剰な雇用・過剰な借金を背負い込む企業もあった

・平成元年施行の「土地基本法」に土地の公益性の基本的な方向性は記載された。

英米法ではfee simpleが一番強い土地の権利。統計的にはそこまで多くない。

・ローマ法を継承されたとされるフランス民法544条に所有権が規定されている

・フランスの収用手続き。収用裁判官(Juge de l'expropriation)の介入がある。自治体の先買権。ユースホステル用地も「公益」になった事例も。フランスには、優先市街化区域(ZUP)制度、長期整備区域(ZAD)制度、土地取引介入区域(ZIF)、法定上限密度(PLD)がある。ZADとZIFは似ている。

・韓国には「」という独特の私的な金融機関がある

 

・「居住権」はどのように考えるべきなのか

・フランスの「建築法(Loi n° 77-2 du 3 janvier 1977 sur l'architecture)」第一条

建築は文化の表現です。

建築の創造、建設の質、周囲の環境への調和のとれた統合、自然または都市景観の尊重、遺産は公共の利益です。

はどのように形成されたのか。

・中国の用益物権を政府が収容する時の手続きとは

・中国も香港も(低所得者向け)住宅不足なのは何故か

・中国の農村部は未だに貧しいイメージがあるが、それが正しいならば何故か

・中国の土地制度も結局土地本位制度なのでは

・日本以外の国はどのように原始的資本を蓄積したのか。土地担保金融ではないのか。

・台湾も韓国も一人あたりGDPは日本と変わらなくなってきているが、土地制度がどのように関係しているのか。

等々はもっと知りたいなと思いました。

 

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