全球観察

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書評『都市郊外のジェンダー地理学』

ちょっと読みにくい本でした。

東京の都市郊外型の都市の構造や自治体財政が、ある時代のジェンダー観を再生産せざるを得なそうな雰囲気は伝わりました。

多摩市桜ヶ丘は、もともと京王電鉄の経営陣が住むような高級住宅街を志向してつくられたなか(1956年~1965年)、ジブリアニメの『耳をすませば』の舞台にもなったりと、良質な住宅街として継承されるべきだったと思われます。ただ、桜ヶ丘2世が戻ってこなかったりと、徐々に少子高齢化が進んだようです。

本書では、定年退職後に地元のサークル活動楽しんでいるような男性たちが「住人」として地域に関わる様子が示されています。ただ、そのようなサークル活動はどの地域でもあると思われます。
そうしたサークル活動がもっと街を良くするような力になるのか、単なるベットタウンの老後の暇つぶしなのかは良く分かりません。「コミュニティ」という言葉がチラホラ出てきましたが、自動車道路としての鎌倉街道が地域「コミュニティ」を分断しているような印象もありましたが、実際にそうした道路を改善していこうみたいな動きもあったりするのでしょうか。

こうした世代の家庭をかえりみない働き方は同時代の欧米の方々からはやや蔑視的に見られていたと思いますが、結局そういういびつな働き方を許容した社会はいびつな街を作ることになり、それは持続可能でもなく負動産でしかなかないようにも見えました。

ちょうど最寄りの「聖蹟桜ヶ丘駅」であるタワマンの抽選が始まっていますが、このエリアを検討されている方に取り、桜ヶ丘の魅力というものはどのように映るのでしょうか。

 

また、八王子市南大沢でも自治体財政が厳しいなか、地元の高学歴女性が低賃金で自治体行政の委託を受けた業務に従事している様子が描かれていました。ある種のやりがいはありそうでしたが、結局はやりがい搾取であり、著者が指摘するように夫の収入や両親の物理的サポートが前提にあるようにも見えて、そうした夫が仕事・妻は家事のやわらかい再生産でしかないと思われました。

 

仕事が都心であるときに、両親のサポートが無い子育てをするならば、わざわざこれらの街を選ぶとは思えないです。ただ、仕事が郊外にあるならば、選択肢にはなりそうです。とはいえ、都心回帰の流れを説明するような昭和郊外の限界みたいのはありそうです。

多摩市桜ヶ丘も八王子市南大沢も私鉄郊外ですが、自動車圏の郊外も同じようにある時代のジェンダー観を再生産するような都市構造なのでしょうか。

 

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