大阪の町人街である北船場の土地の所有権が江戸末期からバブル期前までにどのように変遷したか分析した本です。若干読み辛かったですが、なかなか興味深い本でした。
・明治期の地租改正は所有権の再確認でありそこまで変動はなかった
・1930年代の御堂筋拡幅工事や戦後の財産税が所有権の変動に大きな影響があった
・高度経済成長期に中小経営的既存所有者は貸家業ビジネスに成功し、土地所有権が固定的になった
・バブル期は本書では対象外
のような感じでしょうか。
下記のブログのように意外にレトロな建物が多いエリアのようです。大企業の経済活動のイメージが強いエリアで小規模な貸家業ビジネスが成立するのも面白いです。都市計画が所有権の変動を生み出すことは示唆されるものの、ただ高度利用するのが正解なのか、考えてしまいます。一方で、そうした貸家業ビジネスの継承者はただ土地を持っているだけで莫大な利益をあげれるのもやるせないです。
ある街の面白さを根本的に考えるには所有権のあり方を考える必要があると思われますが、示唆的な本でした。
土地所有権革命、戦争被害、財産税、自然災害、過度な相続税?が無く、都市計画と景気サイクルぐらいしか所有権の変動機会が無さそうなロンドンやニューヨークを同じアプローチで分析するとどうなるのでしょうか。