1996年に出版された大蔵省理財局出身・世界銀行理事という方の土地公有論でした。なかなか興味深かったです。
以下の文章が印象的でした(p243)
「私はよく外国を旅行するが、何となく日本の都市や町や村が美観に欠け、雑然としてダラシなく目に映るのは、日本人の日本の土地の把握の仕方と利用計画、建設とその後の管理が、公益性、客観性を欠き、その都度その都度の政治的な事情や関係者の利害調整だけのご都合主義で処理されてしまっているためではなかろうか。」
メモ:
・地価変動は人口の増減、公共施設の移転、その他投資の集積など外部経済によるもの。地主の貢献は少ない。
・日本の土地の絶対的所有権は地租改正時に当時のフランス民法の影響で形成された。当時の明治新政府の財政難も背景にある。 (地上権や定期借家権をもっと活用すればよかった?地上権型の定期借地権のような概念がその当時あれば。。。)
・1884年の「興業意見」もあり、工業発達のための資本は土地を担保にして創出されることが想定された。ただ、土地を担保にした資本が土地投資に向かうこともあった。
・フランスも、日本の影響が強かった韓国や台湾も、土地の所有権に対して公的な制限がある。なお、台湾の農地改革は、日本の農地改革を担当したLadejinskyが担当したため、比較的近い内容。土地政策全般には孫文の平均地権の影響がある。
・日本の農地改革に最も熱心だったのは1947年に都市農村計画法を制定したイギリス。
・アメリカには土地所有権は無い。あるのは、hold。アメリカの国土の30%は公共領有地、The Federal Land Policy and Management Act of 1976で制限。
・明治以降の官有地払い下げ処分は時の政権の財政にとっては良かったが、安易な手段であった
・福岡県久山町の土地開発公社や六甲アイランドの事例は開発利益と自治体に帰属する点で興味深い
・地籍調査があまりにも遅れている。1947年の農地改革時にも大規模な測量や検知はしていないと思われる。二線引畦畔や自治体が管理している土地などは国有地として正確な面積が不明だが、山梨県程度の面積になると思われる。
・欧州水憲章(European Water Charter)、河川法第二条 など「水」に関しては公共財として位置づける法律がある
・ジョン・ロックは、他の財産権とは違い、土地所有権には公益性による制限があるべきだと考えていた (この点に関する日本語の資料が少なそう)。それは18世紀フランスの絶対的所有権とは違った自然法的土地観であった。