全球観察

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書評『堤康次郎 西武グループと20世紀日本の開発事業』

以前、西武やセゾン系の本をいくつか読んでいたこともあって結構興味深く読めました。

いろいろ細かい事実や数字が書いてあり、当時の周辺状況も含めて、資料的な価値がある一冊に感じました。設立した会社の株式の保有割合はどれくらいだったのか、出資した資本金はどの程度負担していたのか(もしくは誰かに個人的に借りていたのか)、設立した会社の債務状況なども記載されていたら、素晴らしかったのですが。。。

p134に記載されている1926年の社債償還不能事件と受託会社である神田銀行の破産と承継会社である日本興業銀行の方針転換などは興味深かったです。ただ、何故堤康次郎氏がこの時代にこれほど土地を買い占めることが出来たのかが良く分からなかったです。西武鉄道が1948年までは借入金を減少させる方向性だったのも興味深いです(p259)。いわゆる土地本位制のような金融機関の貸出態度は戦後に生まれたのでしょうか。

開発事業が非常に文化的な側面があるのは何故なのか、も不思議です。目白文化村の開発が、土地を売却したい華族への良いアピールになっていたようですが、同時期に華族邸跡地を購入出来た同業者はいたのでしょうか。華族にもアピールできるような文化的な背景がどこから来ているのか、良く分かりませんでした。

最終章に関しては中途半端な気がしました(堤清二で続編を書きたいのでしょうか)。誰が彼の正統な継承者であったか、よりも何故結局何も継承されなかったのか、の方が重要な気がします。事業だけでなく、開発した土地も必ずしも良好な住宅地として発展していない場合が多い気もします。軽井沢やその他の分譲地も投資物件的なマーケティングをしていたようですが、必ずしもその後の流通市場の整備には興味がなかったように思われます。

 

結局何も引き継ぐことができなかった男、そのような人がこの時代の土地開発・鉄道などの公共的な事業を担っていた、というのは言いすぎでしょうか。p316,p313に出てくる赤城自然園のように土地は取得したが結局開発しなかったところが今後一番価値が出てくるならば、少し皮肉に感じます。

 

 

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