全球観察

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書評『堤清二とセゾングループ』

非常にまとまっていて面白い本でした。

急成長

西武百貨店の1964年度売上が378億円、1970年度売上が1300億円(p159)
西友ストアーの1964年度売上が76億円、1970年度売上が1200億円
西武百貨店の銀行借り入れは200~300億円。西武鉄道の債務保証。
西友ストアーは銀行借入れだけでなく、三菱商事から200億円調達。
・恒常的な人材不足。外部スカウト人事の連発。1980年のグループ最高意思決定機関「本部会」出席者11人のうち9人がスカウトした人材(p175,p209)

HARD THINGS

・ロサンゼルス店の失敗で50億円程度の赤字を抱える。
西武池袋本店の火災(p186)
・1969年に上場した西友の上場後初決算で売上2990億円と前年を160億円下回る(p197)。
・スカウトした人材が定着せずに辞めていく(p211)。
・身内の解任(p119,p232,p426)
西武グループからの独立を目指す膨張政策のために西武グループに頭を下げる(上記債務保証、p237、p245、
サンシャイン60再開発計画の撤退。ホテル計画への銀行融資が不可。財界からの評価が下がる(p245)
・「銀座セゾン劇場」発足プロジェクトでの社員の自殺(p335)
・1980年の静岡駅前地下街爆発事故に伴う西武静岡の火災で従業員1名が死亡
・1992年西武百貨店で医療機器の架空取引発覚(p440)

経営者としての素質が無かった?

・1980年の西武百貨店の決算。営業収益が4968億円、営業利益が101億円、経常利益が15億円、支払利息が179億円、受取利息が48億円、有価証券売却益が46億円。銀行借り入れが2300億円、債務保証が697億円。p99
・財務体質が一向に改善しない(p247、p322)
・増田氏のパルコ商法との違い(p292)
・「ぴあ」と提携すると見せかけて真似をする(p350)
・1990年頃にグループ企業「朝日航洋」のヘリコプターが相次いで墜落し、22名の死者。葬儀に出席しなかった。(p460)

組織づくりの稚拙さ

・1983年に「シティクリエイト」なる会社を作る。西武百貨店から出向させる。「デベロッパー意識」は根付かなかった(p73)
・中途半端な権限移譲。組織の意思決定ルートを超えた堤清二直談判の重要性(p193,p336)
・従業員の問屋との癒着を断ち切れない。セブンイレブンとの違い。

まちづくりへの関心

・街とは「非合理的なもの」で「猥雑感」が重要(p44)。「つかしん」で飲み屋横丁や教会などを作るが失敗。
・日本の街は子どもたちが安心して駆け出せるスペースが無い。「つかしん」をつくったときに子供が駆けている姿を母親が安心して見ている光景が嬉しかった(p79)。
・桂坂ニュータウンでの「公園」(p395)

アイデンティティ

・父からの独立としての共産党入党
共産党内でスパイ呼ばわり、除名される
結核になるが、父のおかげで高額医療を受けることが出来る
・父のところに戻る(p117)
西武百貨店は父親からの独立の証明(p127)
西武グループの後継者は自分ではない。
・パルコなどのサブカルチャーは自分のものではない(p301)。
・「銀座セゾン劇場」と「ホテル西洋 銀座」で念願の銀座進出(p312)。「銀座セゾン劇場」の建築費用100億円、内装費用30億円(「ふたつの西武」p181)。
インターコンチネンタルホテル買収のために西武百貨店の土地と建物を担保に融資を受ける(p428)
「母」は実の母親なのか?「妹」と母親は同じなのか? (「わが堤一族・血の秘密」に書いてあるらしい)

 

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