全球観察

全世界の様々なトレンドを記録していきます。

書評『西武争奪』

面白かったのですが、なかなか難しかったです。

 

以下メモ帳です:
・コクドは、プリンスホテル株を100%、西武鉄道株を64%保有していた(2005年10月時点。p182)。西武鉄道株に関しては43.16%保有有価証券報告書には記載されていた。
・コクド株を堤氏は36%保有していた。相続時の「同族会社」認定回避(p210)。
西武鉄道は上場していたが、コクドやプリンスホテルは上場していなかった。旧皇族邸跡地にあるプリンスホテルの土地の多くは西武鉄道保有
・2004年5月頃 西武鉄道株、コクド株等で名義偽装が発覚。小田急電鉄等でも名義偽装があった。日本テレビ東証により監理ポストに指定。
・2004年12月17日 西武鉄道上場廃止時価総額1500億円程度。名義偽装発覚前は4000億円程度(再上場時も同程度)。
・コクドの信用不安。短期資金借り換えが難しくなる。銀行は西武グループに「無担保融資」。借入総額1.4兆円が不良債権に? (p23)。コクドの年末賞与資金のために原宿のコクド本社などの不動産に330億円の根抵当。
・銀行側も「貸し手責任」が問われたり「無担保融資」が背任行為になる可能性(p25)
・コクドは全国に膨大な土地資産がある。簿価は、相続対策もあり、雑な評価。時価にすると、必ずしも債務超過にはならないと思われていた(p26)。
・堤氏は銀行にコクドを潰されると思いこんでいた(p234)。当時、短期有利子負債が借入金の5~7割。
・当時の財務状況を見ると、コクドとプリンスホテルが赤字だが(p89)、西武鉄道は健全そう。


・2004年11月12日 西武鉄道が「西武グループ経営改革委員会」を設置 (p45,IR)
・2005年1月28日 「西武グループ経営改革委員会」が中間報告を発表。後藤氏が西武鉄道に入社。銀行主導の西武グループ再編へ。その数カ月後に最終答申の公表。鉄道とホテル・リゾート等のグループ一体再生の強調。コクド向け債権が「正常債権」になった?
・2005年3月3日 西武鉄道の名義偽装に伴う証券取引法違反(有価証券報告書虚偽記載とインサイダー取引)で堤氏逮捕。インサイダー取引に当たらないと弁護士から助言を受けていたと主張。助言を与えた弁護士の一人は山一證券自主廃業時の大蔵省担当者の長野氏(p49)。コクドの名義偽装では罪に問われず(p244)。
インサイダー取引に関しては、2004年8月~9月に72社に対して約7000万株(発行株式数の15%程度?)を650億円で売却。そのうち、10社に1866万株を216で売却したことが被疑事実(「西武事件」p15)。当初は4000万株程度を売却する予定だった?
最終的にコクドは,72社と売買契約解除した。返却代金総額は650億円。

・2005年5月24日   西武鉄道臨時株主総会。後藤氏が西武鉄道社長に。 
・2005年6月21日 コクドの2005年3月期決算で160億円の債務超過
・2005年6月28日   東京高裁即時抗告棄却 「抗告人は全株式のうち2/33以上保有する株主である可能性は否定できないが、翌日のコクド株主総会開催で回復困難な重大な損害が与えられるとはいえない」
・2005年8月10日 銀行出身の後藤氏による西武再編案の発表。「合併方式」から「持ち株方式」に。 銀行主導ではなくファンド主導の再編案に(p165)

・2005年10月27日 義明氏、西武鉄道、コクドに有罪判決。義明氏は執行猶予付。西武鉄道は2億円、コクドは1.5億円の罰金。
・2005年11月10日 NWコーポレーションの設立。コクドを完全子会社化。堤家内部の訴訟対策(p187,西武鉄道のIR)
・2005年11月11日   東京地裁仮処分申立却下 持株会社設立のコクドの臨時株主総会の手続き上の瑕疵の可能性はあるが、回復困難な重大な損害が与えられるとはいえない」
・2006年1月31日 コクドがサーベラスと日興に第三者割当増資実施。サーベラスから1000億円、日興から600億円で、1600億円調達。西武鉄道の評価額は4000億円程度,コクドの評価額は470億円程度。堤氏が保有していたコクド株は170億円程度という評価(p188,IR)。
・2006年2月3日 西武ホールディングス誕生。発行株式数ベースの持ち株比率はサーベラスが29.93%,日興が15.59%,NWコーポレーションが14.95%に(IR)。
・2007年7月 日興プリンシパルは12.6%を農林中金、政策投資銀行京急などに売却
・コクドの信用不安から逮捕まで経営者が逃避行。リーダーシップとは?

 

この本出版後の出来事:

・2006年6月頃 日経の報道によると、国税局はコクドの西武鉄道保有割合は約50%であり「同族会社」と認定。西武ホールディングスはその他の指摘も受けて23億円程度の追加徴税を支払った(ブログ記事)?

・2011年3月28日 東京地裁判決 → 「株式共有持ち分、堤氏らに認めない」「康次郎氏は社員らの名義を借りる形で自らが株主となるのではなく、支配可能な株主を介して間接的にコクドの事業を支配したと考えるのが合理的だ」(日経)
地裁と同結果の高裁の判決の解説 → 「間接事実から実質の株主であることを認めさせるのはかなり難しい」
・2011年7月7日 東京地裁判決 → 「原告側が主張するような借用名義株は存在しない」「猶二氏らが再編当時にコクドの株主だったとは認められない」(日経)
・2012年5月21日 東京地裁判決 → 「法定相続に基づく堤康弘氏の旧コクド株の所有権認めない」(日経)

・2011 年 9 月 13 日 最高裁判決 (最高裁判決日経) →「虚偽記載がなければ投資家が西武鉄道株を取得しなかったのは確実」。細かな事実認定は東京地裁判決 (2008年4月24日)も参考になる。全部で裁判は9個ほど。堤氏にとり、裁判所のこの反応は予想外だった?

・2012年5月頃頃 西武ホールディングスが上場準備観測(ロイター申請書 )。西武ホールディングスサーベラスの対立激化。
・2013年4月3日 堤義明氏、サーベラスTOBに反対(日経)
・2013年~2014年頃 堤義明氏がJOC東京オリンピックの顧問に就任
・2014年4月23日 西武ホールディングス東証一部に上場。時価総額は約5473億円(日経)

・2014年10月7日 最高裁棄却。西武ホールディングス一連の訴訟終了。 → 「当社の設立を含む一連の当社グループ再編手続に一切の瑕疵がなく、再編が正当であることが認められました」 (IR日経)
・2016年2月10日 西武ホールディングスが堤氏らよりNW株を回収(IR日経)
・2017年8月16日 サーベラスが全株式売却。投資回収終了。1000億円投資して2000億円になった?  (日経)
・2022年2月 「ザ・プリンスパークタワー東京」「苗場プリンスホテル」等31施設をシンガポール系政府ファンドのGICに1500億円で売却することを発表。 (IR日経)

 

よく分からなかったこと:

西武鉄道とコクドとプリンスホテルは一体である必要があるのか(奇しくも村上ファンドの立場と同じ。p159)。
・銀行団はコクドとプリンスホテル清算しても良かったのでは。
西武鉄道、コクドも罰金刑だったことは再編時に影響あったか。
西武鉄道が第三者割当増資ではだめだったのか。何故コクドの第三者割当増資?
・そもそもコクドの総資産は時価ベースだといくらぐらいだったのか。
・ホテルやリゾート開発を否定することは旧経営陣の感情的に難しかったか。
・株主からの損害賠償請求訴訟で226億円払ったときに、何故旧経営陣から255億円を回収したのか。旧経営陣には株式を持たせたくない? 旧経営陣の懐事情が厳しい?
西武鉄道株、コクド株の名義偽装訴訟を抱えながら株主総会を開催するリスクや上場するリスクをどのようにマネージしたのか。日本の裁判所は既成事実に弱い?
・別人の名義になっていた株を事実上所有していたことはどのように立証されたのか?
・コクド株の名義保有者はNW株ではどうなったのか?

 

西武ホールディングスirのページに再編スキームが記載されていたので、それを見ながらが読んだほうが良いと思います。

プリンスホテル西武鉄道は必ずしもシナジー効果は無い気はするんですよね。最近の西武鉄道はどちらかというと沿線開発に力を入れている感じがしますが、1960年代から力を入れていればもっと違ったエリアになっていた気もしないでもないです。

 

www.youtube.com

www.youtube.com

www.youtube.com