全球観察

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書評『Spotify』

以前に、NetflixSpotifyの創業期を描いた『ザ・プレイリスト』を見ていたので、結構面白くサクッと読めました。

・各国のケータイ通信会社と上手に契約して、地方都市や田舎にユーザー層を広げることが出来た。

Facebookとの連携は色々ギクシャクした面もあった。SpotifyユーザーはFacebookアカウントが必要という条件を呑んだ。そのときSpotifyのユーザー数は1000万人に届いていなかった。

・2013年7月~9月などアクティブユーザー数が減った時期もあった。レーベルに払った前払い金や無料ユーザーのライセンス料を有料プランからの収益で回収するためには成長が前提だった?ので倒産の危機とも言えた。

・サブスクサービス乱立を回避するために、TIDALやインドの音楽サブスクサービスを買収しようとした時期もあった。

・動画配信ビジネス参入を検討した時期もあった。モーメンツ、video clip、spotify runningなどの新機能は姿を消した。

・Echo Nestの買収は失敗だった!?、Discoveryは2人のエンジニアが趣味的に作ったが評価されず退職した。

音楽配信サービスのMOGはBeatsに買収され、Beatsはappleに買収された。2015年春にapple musicが発表された。そのときappleにクレジットカードを登録しているユーザーは8億人おり?(p289)、Spotifyのユーザー数は2000万人だった。apple musicで独占配信するアーティストも増えた。change the rapperもその一人Beat→Spotify→Appleみたいな人材引き抜き合戦もあった。

apple music/tidal等々後発組の音楽サブスクで無料プランがあるところはなかった。

IPO前のレーベルとの契約更新交渉で有料会員のみ配信の条件を呑んだ。

・アーティストが大手レコード会社を通さずにSpotifyに投稿できる仕組みを作ろうとしたが、大手レコード会社の反対に遭い(インド進出時のワーナーとのトラブル)、結局断念した。とはいえ、Spotifyにそれっぽい機能はありそう?。

などなど面白かったです。

 

これだけ競合がいるのに、ユーザー数を伸ばし続けているのは不思議で、結局良くわかりませんでした。メジャーレーベルは無料プランが可能な音楽サブスクをもっと作ることでSpotifyの価格交渉力を下げるみたいなことはしないんですかね(無料プランがあるのはDeezerYouTube Musicぐらい?)。このnoteにあるように、音楽サブスクで独占配信が少ないのは海賊版対策もあるのかもしれません。結局、Spotifyが一強的に伸びることでレーベルの利益になるみたいな判断があるのでしょうか(音楽産業の規模も伸びていますし)。

ひとまず、Spotifyはインターネット時代の音楽の流通チャネルとしてある種のインフラのあり方を示したのだと思います。NTT光みたいに何もしなくてもお金が入ってくるようなものでしょうか。音楽の仕入れはレーベル依存だとは思うので、あまり利益は出ないように見えます。アーティストとの直接チャネルを作り独自コンテンツを増やすという路線が取りにくいのがnetflixとの違いでしょうか。音楽サブスクにより欧米ではインディーズレーベルが台頭しているみたいな記事も見かけますが、日本みたいに小さなレーベルが増えても、本書にあるようなライセンス費が安くなる世界というより配信チャネル側の値下げ競争になる気もします。

Podcastを結構頑張っているようですが、なんだかんだYouTubeが強い領域にも思います(全世界での2兆円程度のpodcast広告市場規模は2030年には15兆円ぐらいになるらしいです)。ラジオ放送をPodcast化するみたいなtoBのソリューションなりPodcastのアドテクは案外面白そうです。書籍の著作権が良く分からないのですが、Audio bookのサブスクみたいなこともしているみたいです。この分野でAmazonに勝てたら凄いです。「音楽」でインフラを拡大しつつ、「音声コンテンツ」で利益を得るみたいな将来像を描いているような印象です。中国の音声メディアプラットフォームが黒字化に苦しんでいるのは必ずしも明るい未来を示唆しませんが。

それにしても、コロナ禍でリモートワークになり車通勤とか同僚との会話とか少なくなったはずなのに、それでも欧米圏の人はPodcast聞くんですね。同僚・友人とのカラオケがなくなったときに日本では音楽の聞き方変わったりしたのか気になります。中国のテンセントミュージックのカラオケ収入は結構成長しているようです。SKYGGEみたいなAIが作った音楽で良いやっていう人も増えてきそうな気もします。

 

この音楽流通チャネルで結局音楽文化は豊かになったのかという疑問の声が大きくなったときに、きっとまた新しいビジネスモデルをアメリカの若い誰かが作るのだと思います。それはPandoraっぽいラジオ局のような気はしますが、Pandoraはすでにアメリカにあるし、寧ろイギリスではPSRとのライセンス交渉が上手くいかなくて撤退したし、イギリス発のLast.fmも良く分からないし、、、となるとイギリスの法改正の動向に注目しておけば良いんですかね。

ひとまず各国でレーベルと契約を結んでいるTikTokが新しい音楽サービスを始めると思うのですが、それを見て次の著作権の議論が始まったりするようなしないような、感じでしょうか。

 

 

 

www.theverge.com

musically.com

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