全球観察

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『ザ・プレイリスト』感想

Spotifyの創業期を描いた全6話のドラマです。

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6人の異なる視点で物語を進めるというスタイルは結構斬新で面白かったです。

 

ネタバレになりますが、自分の追加調査含めて少しメモです。

パイレートベイという文脈のなかで産まれた。音楽が無料で聞けるべき、というスタイルはこの文脈の影響も多そう。どの国もwinny事件みたいのはあった。

・創業期は、P2P的なユーザーとクリエイターのつながりやユーザーとユーザーで音楽を交換するようなシステムの構想があったようだ。iPod以降iPhone以前でどういう音楽の聞き方を想定したのか。

iTunesは違法ダウンロード問題を解決しなかった。

・創業期は、ソニースウェーデンとの交渉が結構重要そうだった。日本とは違いメジャーレーベルが市場を独占かつ著作権も自前で管理しているのでトップと握れば新しいサービスを作れる 。日本に進出が遅れたのも交渉が面倒くさかったから(18社ぐらいと交渉が必要?)。フランスのDeezerもアメリカと日本を後回しにした。なお、原盤権を多数の芸能事務所が持つ日本ではPandoraのようなインターネットラジオも難しかったYouTube Musicもインディーズレーベルとの契約で難航した。

・ニューヨークでのソニー本社との交渉ではMTVがレーベル側のトラウマらしかった。ただ、2007年頃にインターネットラジオに対するレーベル側の対応が変わり、それが音楽ストリーミングへの追い風になった可能性。恐らく、音楽レーベル業界全体で著作権侵害との戦いは麻薬との戦いみたいなものであり寧ろ逆に無料で配りまくることでどのように収益を上げるかみたいな認識の変化があった。

2008年9月にはSpotifyにビジネスモデルが近い「MySpace Music」がアメリカで開始。2008年10月Spotifyスウェーデンで開始した。2009年頃にイギリス上陸。そのころのイギリスのブログによると、MySpace Musicはソーシャル的な機能が多いが、Spotifyは純粋な音楽体験が出来るとのこと。2009年12月にiMeemとLalaという音楽配信サービスはそれぞれ買収され、サービスを停止した。2015年には定額制音楽配信のRdioが破産。2015年にWe7もオーストラリアの企業に買収された。

・ユーザーの統計をもとに、フリーミアムとペイウォールの権利関係をレーベル側と締結出来たのは凄い。Merlinを含むメジャーレーベルと資本提携するスキームも凄い(彼らはIPO後に保有株を売却)。最低保証金額(Minimum Gurantee) はこの頃はどのように契約したのか。

2015年5月にはGroovesharkが閉鎖するなど、違法アップロードサイトは少なくなった。そしてGroovesharkの閉鎖ページにはSpotifyへの移行を勧める文章がレコード会社との和解条件として掲載された。

・広告収入に依存する音楽配信サイトのSpiralFrogやRockusは2009年に事業停止している。2009年8月にSpotifyiPhoneアプリ公開。街中どこでも聞くために有料会員になる人が増える。
TCP通信で独自プロトコルを作ったのは凄い。AppleのHLSとの違いはよく分からず。とはいえ、有名ではないアーティストの曲を聞こうとすると一瞬ラグがある気はする。Spotifyの裏側はAWSだったが、GCP に移行。CDN(scdn.co)はfastly使っているっぽい(昔はakamai?)。

・2010年2月のシリーズCでピーター・ティール率いるFounders Fundから1100万ユーロ(11億円)を資金調達した。ナップスターを運営していたショーン・パーカーがこのころに取締役就任(2009年8月のSpotify CEOへのメールを見ると、ショーン・パーカーはモバイルデバイスの台頭を想定していなかったように思える)。2011年7月アメリカ進出。2011年9月Facebookとの連携の発表。Facebookキラーコンテンツである音楽アプリiLikeはMySpaceに買収され2009年にFacebookとの連携を停止したが、Facebook Musicを作るのではなくSpotifyやRhapsody、Rdio、Pandoraとの連携を選んだ。最終的に買収するEchoNestと組み、音楽レコメンドの精度を上げることで当時アメリカで流行していたPandoraやLast.fmのようなラジオ的視聴スタイルもカバーした。

・2012年にはFacebook上のコカ・コーラのページをうまく活用するようなSpotifyコカ・コーラの提携が発表された、Spotifyの国際展開やコカ・コーラのリブランディング。ただ、spotifyは80ヶ国程度の展開だが、apple musicは167ヶ国程度の展開

テイラー・スウィフトSpotifyから離脱したが、戻ってきたSpotify CEOのブログ。 2022年のコロナ禍にSpotifyから離脱するアーティストを紹介する記事があったが、今見ると全員Spotifyで配信していた。

・2012年頃の音楽配信等のデジタルコンテンツに関するイギリスの法律Spotifyの追い風になった。ただ、2021年頃にイギリス議会で音楽配信プラットフォームとアーティストへの支払いに関する検討会が開催された(トラブルが起こってから対応する的な)。

・韓国ではKakaoとライセンス契約のトラブルmelon などの競合も居て、Spotifyはあまり普及していない。ドイツは自国の定額制音楽配信Simfyが、2015年に自国市場から撤退

 

 

 

winny事件みたいな刑事事件とソニーとの交渉を考えると日本でも産まれてもおかしくないサービスでしたが、当時の日本からはこういうサービスが産まれるのは難しかったのでしょうか。ひとまず、スウェーデンはオフィスが広くてゆとりがあってみんな疲れていない感じがしました。

 

Spotifyのビジネスモデルは持続可能では無いのでは、という疑問も提示されていましたが、他の配信プラットフォームと比べてアーティストへの還元率が高いとも低いとも言えない気がしました。中国はよくわからないですが、どこも同じような法律スキームであることを考慮すると、もともと土壌があったというか、このドラマにあるようにSpotifyの法務(Petra Hanssonさん)がどこまでこの新しいビジネスモデルを作ったのかは良く分からない感じもします。YouTube Premiumは2014年からですし、日本でSpotifyのような無料プラン+有料プランの組み合わせを提供しているサービスはそこまで多くないです。

Spotifyとソニー・ミュージックエンタテインメントとの契約書は公開されていますが、Spotifyから見た売上の割合が多いのでしょうか(IPO時の資料古い契約書に関する分析古い契約書に関する報道)。SpotifyはPLでは赤字でもレーベルへの著作権使用料はノンキャッシュ費用なので営業キャッシュフローは黒字になりがちらしいのですが、この辺の仕組みがよく分からず(あと、こんなに注記があるIPO資料も面白いですね)。

Aさんが1000円でxの曲を10回聞いた、Bさんが1000円でxの曲を1回聞いたyの曲を1000回聞いた、ときに2000円はxには11/1011=21円、yには1000/1011=1978円というように分配していると思うのですが、xに1000*10/10+1000*1/1001、yに1000*1000/1001と計算しないのはなんで何ですかね。計算量が大きくなりすぎるからとかでしょうか。視聴回数が多ければどちらでも同じとか?
Universal MusicがDeezerとTIDALとUCPSで契約したらしいです。イギリス議会でも議論になったAGMなる収益分配方式も面白そうです。なお、TIDALの株式過半数はSquareが取得しています。

サブスクのアーティストへの還元率の問題は国ごとにレーベルとアーティストの契約が違うので、国ごとに濃淡ありそうです。もしかしたら日本は一部レーベルの契約がかなり悪質なのかもしれません。日本に関しては、レーベルの音楽ビジネスのセンスの無さという論点も存在するかもしれません。ソニーの村松氏の英語インタビューを読むと、CDが未だに60~70%ぐらいのシェア、ボーカロイドVTuberなど日本独自の音楽市場を感じます。

https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/migrate.musicman-net.com/2013/01/f50eb8e542741a.jpg

https://www.musicman.co.jp/column/20229

 

Spotifyにより昔の有名なアーティストは収入は増えるかもですが、名もないアーティストは逆に難しい環境なのかもしれません。アーティスト印税の推移、アーティストの失業率等々のデータを見ないとなんとも言えませんが。New Music Wednesdayとかあるものの案外Spotify経由で新しいアーティストと巡り合わないのは気のせいなのでしょうか(TikTok、ニコニコ、YouTubeSoundCloud等で知ってSpotifyApple Musicで聞く流れの方が多そうなイメージです)。

日本では2019年にイープラスと連携しているので、ライブ情報などもSpotifyで確認出来ますが、どれほど送客しているのでしょう。Shopifyとも連携可能なSpotifyのECはどの程度売上あるのでしょうか(netfixの物販 よりも売れてそうなイメージ)。
インディーズレーベルが増えている国も多そう(元々メジャーレーベルが少ない日本に追いついてきた?)ですが、Spotifyのような音楽配信YouTubeのような動画共有、どちらもロングテールというより人気のある人に更に人気が集まりがちなのは今後共通認識になっていくと思われます(関連記事)。理由は良く分からないですが、英語圏のアーティストがSpotifyでは人気になる傾向があるようです。サブスクだとアルバムの世界観が伝わりにくい、音楽がサブスクで聞かれる用につくられる傾向があるなどの論点も興味深いです。Pandoraのようなラジオやその他のチャネルをどう作っていくのかも重要になるように感じます。

一部の地域では図書館が地元の音楽を配信をしているようです。

 

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2018年9月Spotifyはアーティストが直接アップロード出来る機能を追加しましたが、2019年7月にメジャーレーベルの圧力もあり?その機能は停止となりました。個人的には、このときにSpotifyは利益が出にくい体質となった気がします。Spotifyのレコメンドでインディーズアーティストを優先してメジャーレーベルの影響力を事前に下げておくとか、しておいた方が良かったのかもしれません。
そして、Spotifyは音楽分野でのオリジナルコンテンツは諦め、Podcastに資金を投下し始めます。2016年にはSoundCloudSpotify買収する噂もあったんですね。その頃のSoundCloudはアーティストのユートピアだったのかもしれませんが、今はどうなのでしょう。
Bandcampというダウンロード販売のプラットフォームも面白そうです。音楽配信サブスクは原盤権を持つ人に中長期的に利益になる観点から、アーティストが原盤権を持てば良いのかもしれません。
PandoraとかLast.fmとか今何しているんですかね。こちらのnote を半分ぐらいしか理解できなかったのですが、JASRACが無いアメリカで、レーベルとの個別交渉で展開したSpotifyが雑にスタートアップ的に対応した作曲家や作詞家の著作権管理に対して、SoundExchangeを使っていたPandoraは真面目に対応しようとしていてそれが難しかった?とかユニバーサルミュージックなどのレーベルとの収益分配の交渉が上手く行かなかった?とかでサービスの成長が止まってしまったようです。2014~2015年に掛けて米国主要レーベル vs Pandoraの訴訟がありPandoraは1972年以前の楽曲に関するライセンス料で110億円を支払うはめになったようです(Spotifyはレーベルとの個別ライセンス契約なので問題なし)。車のEV化が進むとAVラジオが搭載されなくなるようですが、音楽の聞き方に影響あるでしょうか。

最終話にもあったように、レーベルと音楽配信プラットフォームの株式持ち合いが独禁法違反として提起されるといろいろ状況は変わりそうです。「原盤権」の集中管理制度とかが作られると個別にレーベルと交渉するコストが無くなるので、新しい音楽サービスが乱立するかもしれません。DMCAのセーフハーバー条項で音楽に関して改正されるならばYouTubeなどの動画共有サイトも広告モデルでは経営が難しくなるかもしれません(実際にYouTubeは音楽の宣伝の場ではなくて消費の場になっているようです)。

いずれにせよ、MySpace Musicもそうですし、アニソンの定額配信のAniUTaもそうですし、SonyのMusic Unlimitedもそうですが、音楽に関しては権利者が集まって作ったサービスは使われにくい、というのは教訓だと思います(ラジオ局が作るradikoとかテレビ局が作るTverとかと違って)。VEVOぐらいでしょうか。寧ろ、権利者は新しい才能を持った人たちと他人の金(VC)をどう使うかが大事なように見えます(趣旨は違いますがFred Davis氏のインタビューが面白かったです)。

 

2018年からDAZNと連携したりしていますが、ユーザー数が頭打ちになるならば、こういうバンドル的な感じを広げていくしかないんですかね。Podcastのオリジナルコンテンツ拡充して映画化も狙う路線もあるみたいです(オバマ元大統領はspotifyとの契約を更新せずaudibleに行きましたが)。Spotifyがどのようなデータを持っているのか分からないですが、ChatGPTならぬRadioGPT・AI DJはどの程度普及するでしょうか。

ソーシャルグラフとか関係なく若年層が常に流入する可能性が高い点を踏まえると、Facebookとかが買収しても良い(買収額10兆円ぐらい?)と思うし、Facebook音楽配信サービスを作ってしまっても良いと思いました(2016年にそのような動きあり)。2011年にMySpaceが音楽を使って一発逆転を狙ったときもそのような議論があったようです。
TikTokで少しバズる→YouTubeで全曲流すみたいなプロモーションも増えている気がするので、バイトダンスがダークホースですかね(e.g 。瑛人の「香水」 Lil Nas X「Old Town Road」)。中国ではすでにサブスクを始めているみたいですが、テンセントミュージックの牙城を崩せているのでしょうか。Ressonなる音楽サブスクアプリ?はブラジル、インド、インドネシアでローンチしているみたいですが、ソニーとのライセンス交渉が決裂したみたいです。Sound Onという直接TikTokにアップロード出来るツールも面白そうですが、何故レベニューシェアで合意出来なかったのか、良くわからないです。メジャーレーベルの音楽は売れないみたいなデータをTikTokが持っているのでしょうか。。。

 

 

 

テレサ・テンとか王菲みたいな次の「アジアの歌姫」はどこからどのように出るのでしょうか。もしくはもう現れないのでしょうか。

 

 

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