全球観察

全世界の様々なトレンドを記録していきます。

書評『ヒルズ黙示録・最終章』等

2005~2006年頃の「ニッポン放送株買収」「阪神・阪急の合併」「村上ファンドのインサイダー事件」「ライブドア事件」について面白く読めました。

最後のページに書いてあることに凄く納得感がありました。2004年頃にGoogleIPOして2005年にFacebookのシリーズAがあり2006年にSpaceXNASAと契約していましたが、当時の日本はこんなにダサかったのかというのが感想です。今からすると、検察の起訴は少し無理筋にも見えますが、それ以外にこの時代のダサさを終わらせる方法はあったのでしょうか。。。

 

ニッポン放送株買収」

まず2005年2月8日にTOB無しに一気に30%近くのニッポン放送株を取得出来たのがビックリです。大量保有報告書制度が洗練されておらず、村上ファンドがいつどこでどの程度売買して、いくら儲けたのかは結局よく分からないようです(p97,p118。あと、何故ほとんど売ったあと、3月に買い増ししたのか)。

ライブドアニッポン放送買収が結局何をしたかったのかは良く分からないです。「放送と通信の融合」は良いとして、過去のテレビ番組の著作権や肖像権をどう処理しようと考えているのかは全く分からなかったです。3月25日ごろまでにライブドアが50%以上ニッポン放送株を取得したときに、5%ぐらいはすでに持っていて、30%はリーマンからのMSCBだとして、15%分の資金をどう手当したのでしょうか(クレディスイス?)。

3月24日のニッポン放送のSBIへのフジテレビ株の貸し出しに差止請求しなかった理由も良く分からなかったです。いずれにせよ、5月23日に和解したときはニッポン放送株をほぼ購入価格でフジテレビに売却しただけでなくフジテレビからの400億円の出資もあり経済的にはライブドアは儲かりました。1400億円ぐらいの現金を手に入れましたが、2012年にIPOして6000億円の現金を手に入れたFacebookとは使い方は全く違いました。MSCBは転換されていたので、どうせならばニッポン放送株を保有し続けて中長期でフジテレビと対峙しても良かったのでは(役員入れ替え・貸株契約破棄・ニッポン放送増資でフジテレビの保有率を25%未満にする・ライブドアは新たな資金調達でフジテレビの株も購入)、という気もします。

フジテレビに対しては、TOB価格が安すぎたのでは、当時の経営陣もテレビ局の経営に携わる人材として適任だったのか、そもそも放送法・電波法の規制にある公共性の高いビジネスがある家の相続のゴタゴタに巻き込まれている時点で私物化感は否めない、という気もしました。

 

阪神・阪急の合併」

「ピストル堤」なり「強盗慶太」なり今の私鉄はM&Aの歴史がありますが、阪神と阪急の合併が必要だったのかは良く分からなかったです。この本を読む限り、京阪と阪神の合併の方が公共的な価値は創出されていた、気もします。そのときの経営者の相性とか保身感情で公共性の高いビジネスの方向性が決まってしまうのは、少し不思議な気もしました。保有資産の割に阪神株が安すぎる、と見抜いた村上ファンドは凄いです。

話変わって、2022年にジャフコ株を保有したときに、村上ファンド保有された企業で企業価値が上がったところは無い趣旨の20ページぐらいの資料をジャフコ側は公開しましたが、少し説得力がある気はしました。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/8595/tdnet/2174167/00.pdf

 

村上ファンドのインサイダー事件」

ライブドアニッポン放送株買収は、村上ファンドの構想に乗っかっただけ?なのに、なんで村上ファンド側がインサイダー疑惑で起訴されるのか、というのが良く分からなかったですが、これまで保有していた13%の株が売り抜けられなかった?と思われるときに、2004年11月4日~2005年1月5日の間に165万株買っている(p97)理由は確かに良く分からなかったです。

 

ライブドア事件

資本取引を売上計上する、ようなことをしている印象でした。そのこと自体がすぐに證券法違反ではないにせよ、持続可能なビジネスではなかったと思います。堀江氏の部下が私服を肥やしていたこと、それは背任等の罪に問われなかった、堀江氏の危機のときのリーダーシップの無さ、などが印象的でした。株式分割したときに株価が上がる、という前提が意味不明でした。

 

 

 

この新書の前編も面白かったです。フジテレビのニッポン放送TOBの原資も大和証券から調達した800億円のMSCBだったんですね(p109)

 

楽天のTBS買収」

こちらも結局楽天は何がしたかったのかは良く分からなかった(2005年10月13日に発表された提案内容)ですが、最終的には買収を諦めて600億円ぐらいの損失になったようです。何となく発想や展開が楽天モバイルに似ている?ような気もしました。TBSの株主構成に脆弱性があると見抜いた村上ファンドは凄いな、という感じです。こちらも村上ファンドがいくら儲けたのか、は良く分からなかったです。

 

こちらは「ニッポン放送株買収」 の大体の時系列を追える本でした。識者インタビューで必ずしもニッポン放送やフジテレビ側の内向きの対応を評価していないこと、ライブドアに対しても説明責任がないことを評価していないこと、など今読んでも全く違和感ないことなど日本経済界の健全性を感じました。

 

ホリエモン最高裁判決前の2009年段階の本です。「テレビ放送にライブドアのURLを貼り付けるのが、私がしたかった唯一のこと」(p26)、「ソニーライブドアを合併させることでライブドアブランドを捨て、新生ソニーiPhone的端末で世界を席巻、世界で一番利益をあげる企業体になる」(p46)、は少しビジョンなさすぎな気はしました。ニッポン放送のフジテレビ貸株については法廷闘争の長期化が怖かったようです(p34)。楽天銀行となる「イーバンク」を上手くPMI出来なかったことがライブドア事件の遠因な気もしました。この本の数年後に『ゼロ』みたいな文章を書けるのはちょっと凄いかもです。

2007年3月に一審の判決が出る間に出版された本です。全体的に文章が非常に読みやすいのですが、弁護士が書いた本なのでしょうか(笑) p81の「11月8日の時点で、ニッポン放送株買収の環境が整ったという気はまったくしていなかった」とありながら、宮内氏の証言で村上氏はインサイダー取引で有罪になるものなんですね。ライブドアストックオプション(p240)はどれくらいあったんですかね(この記事によると持株96株、ストックオプション20株で17億円ぐらいの利益?)。逮捕者を増やしたくなかった、みたいなモチベーションがどの程度あったか、もっと知りたかったです。
4人の取締役が逮捕されたあとに「大人」たちが取締役となったはずなのにフジテレビに損害賠償求められて素直に応じてしまっていたり上場廃止になってしまったりなのは少し残念です。第三者委員会ぐらい設置しても良かった気もします。上場廃止でパニック売りになったときが一番の買い時だったのも皮肉です。

 

 

2006年5月の段階の出版ということでホリエモンの初公判の前の情報です。確かに守秘義務は大丈夫なのかwと思うことはありますが、何か極秘情報があるわけではないです。p150にある図は結局検察の捜査や裁判の過程で「?」の部分が埋められますが、監査法人でもこの理解だったのか、という感じはしました。中小監査法人の経営の難しさ、ライブドアのような「粉飾決算」の会社のガバナンスの監査側から見た雰囲気、などなども興味深かったです。
ライブドアM&Aパーチェス法ではなくて持ち分プーリング法で会計処理されていた(p73)ようですが、2007年からは上場企業はパーチェス法が強制適用(p69)だったので、もしライブドア事件がなかったらライブドアという会社はどうなっていたのでしょう。

 

accountingse.net

yamaguchi-law-office.way-nifty.com

forest-consultants.com

forest-consultants.com