全球観察

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書評『星乃珈琲店誕生物語』

「星乃珈琲店」というコーヒーブランドがどのように作られたのかを日記形式で追える非常に興味深い本でした。2008年のリーマン・ショック後前後の「スターバックス再生物語」も並行して読みましたが、だいたい同時期の話で両方とも興味深く読めました。

スターバックス再生物語」とは違って、エラそう・威張り散らかしているような印象、全体的に安っぽい印象が最初の数ページではあったのですが、正直こちらの本の方が面白かったかもです。

面白かったのは、「星乃珈琲店」のコンセプトが結構ぶれながら収斂していく過程です。様々な地域で出店して、様々な反応を見ながら、試行錯誤していくのは簡単なように見えて、土地交渉・物流などの相当のノウハウが無いと無理だと思われます。また、グループ会社の他の店舗で流行ったメニュー(パン、ソーセージ、焼き菓子)も取り入れたりと、まさにこの著者と「グループの総力が結集したブランド」(p246)であることを感じました。

メモ:

・「朝食需要」「パン」などがブランドコンセプトのきっかけ p41

ドトールエクセルシオールカフェで出せない「プレミアムコーヒー」も出したい p55

・1号店の蕨店ではコーヒー専門店でパンも売るぐらいのコンセプトだった。初日の売上は20万5966円。 p56

・星乃珈琲のスフレは2店舗目の新宿東口店で自社物件の居抜きで都市型での実験をしようとしたところ、たまたまピザ窯があったから出してみた。ただ、当初は全然売れなかった p67

・4店舗目は愛知県の豊川郊外というこれまでとは全く違うエリア。「コーヒー専門店」と「ファミリー向けレストラン」の2つのコンセプトが混じっていたが、コーヒーよりも食事メニューの強化を優先した p81

鶴ヶ島店は俵屋からの業態変更だが、「男性」「女性」「子供連れ」「シニア」などの客層の広がり、「モーニング」「夕食後」までの客が途切れない、「来店頻度の増加」などの違いを報告されブランドが強くなっていることを実感した p101

・オープンから2年後の40店舗である習志野店と41店舗目である片瀬店は土地を自社保有していた。この両店舗は外装を和装にしたが、この頃にブランドコンセプトが固まってきた p115

・姫路店はオフィス街の近くだったが、「高齢者」「ファミリー層」ではなく「サラリーマン」「自営業者」「若い女性」が多い立地だった。「高齢者」が多い郊外の立地は売上が徐々に下がる傾向があるが、新宿や銀座も含めてこういう立地は売上を徐々に伸ばすことがある p206

・オープンの際の客の入りで、大体の成否は見当がつく p220

・オープンしてから徐々に口コミで客数が増えるのが一番良い p84

・月商は1000万~1200万円になるように設定している p127

・ショッピングセンターに出店する際の初期投資は坪130万円程度。30坪だと3900万円。撤退費用は900万円。5年間で撤退すると、(3900+900)/60で月80万円のコスト。30坪で800万円/月の売上があっても利益が出ない。 p152

・償却は定率法。店舗は10年経てば償却が終わる。そうした店舗が200店舗あり、貴重な資産。リニューアルだと初期投資が1/3ぐらいで済む。 p161

・日本のビルオーナーは売上を上げていても定期借家契約をもとに追い出したがる p156 新宿アルタなど p137

加古川店出店の際、既に好立地に出店していたスタバは賃料が倍だったのでそこでの出店は無理だと感じた p209

・「紅茶」専門店のモーツアルト の業態変更店舗である栄地下店での星乃珈琲の繁盛ぶりを見て、日本で「紅茶」ブランドが難しいことを感じた。 p129 p70

・スパゲッティーの五右衛門は消えゆくブランド p97 ただ、未だに新規出店はしている印象。

・星乃珈琲のブレンドコーヒーの40%はキューバ産 p236

シンガポールでは好調だが、上海ではだめだった p111 

今はシンガポールに8店舗あり、中国撤退した代わりにマレーシア・インドネシア・台湾に進出しているんですね。どの国もショッピングセンターが多い印象です。

個人的な体験

個人的な体験として、星乃珈琲は2010~2015年頃にp120の六本木店が最初だった記憶なのですが、2013年4月にオープンしていたので、オープン当初に行っていたようですね。ただ、それまでに星乃珈琲の存在は知っていた記憶もあり、もしかしたら別のお店にも行っていたかも知れません。いずれにせよ、星乃珈琲は「都市型」「やや高いコーヒー」「ややインテリアにこだわる」ぐらいのイメージでした。

 

その数年後蕨店に何かの都合で行って、「郊外」の星乃珈琲は結構良いなと思ったのですが、実はその蕨店が第1号店(2011年3月18日)だったのですね。隣のパン屋の存在も認識していましたが、深くは考えたことはありませんでした。

 

その数年後にp114の習志野店(2012年12月)にも行きましたが、「郊外」だけでなく「蔵」「大きな窓」なども印象的でした。この本では「郊外」では「蔵」のイメージで展開していたようですが、最近は「大きな窓」「現代風」な印象です。おそらくその分岐点は高井戸店(2014年4月)な気がします(p215)。
寧ろ、星乃珈琲の「郊外」はカッコいいので、中途半端な郊外店を見ると少し残念に感じます。8店舗目の八王子堀之内店(2012年2月)とこの本には出てこない南大沢店(2021年12月)の違いなども印象的です。

最近の出店傾向をみるとショッピングセンターが多い気がするのですが、この本で批判されている定期借家契約で何か有利な展開があったのでしょうか。

 

 

architecturephoto.net

www.wooddesign.jp

computer-philosopher.hatenablog.com

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8dabe.com

1st-sekkeicompe.hoshinocoffee.com

 

hoshino-shoplist.cafe-tatsujin.com

シンガポールでのメニュー:

https://d15k2d11r6t6rl.cloudfront.net/public/users/Integrators/c2211f6c-ac34-46d9-9fcf-28946864c5ea/business_3390/Menus/New%20Grand%20Menu%20Mar%2023.pdf

 

zangyodai-bengoshi.com