全球観察

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書評『堤清二のイベント戦略』

1984年10月6日に有楽町西武が開業しましたが、その2年後に出版された本です。

イベントドリブン商法(「話題」→「有名」→「収益」)や当時の雰囲気が分かり、結構面白かったです。

全体的に、「ソフトと小売の融合」のようなことを模索している印象を受けました。

 

「ファッションを買う場所ではなく、見せる場所(p101)」「小売業は街と関われば関わるほど強くなる(p81)」「イベントでムーブメントを作る(p37)」「モノを買うのではなく情報を獲得しにパルコに来ている(p137) 」などパルコ的な小売の紹介をするとともに、「モノに対して、精神的な充実感を求めている(p139)」などの新しい動向も紹介しています。

情報という点で、パルコは「100チャンネルテレビ」(p138)なるものをしていたのは初耳でした。池袋西武のスポーツ館(p165)も情報の発信に力点があったようです。

西武百貨店西友は、映画分野のシネセゾンや音楽分野のWAVEなどを通じて精神的な充実に対するソリューションを拡充させて行きます。

イベントで集客をしていた小売が、メディアになり、情報になる、そんな雰囲気感がただようなか、糸井重里氏の「うれしいね、さっちゃん」キャンペーン(p152)もあり、投資額180億円の有楽町西武には開店3時間前から客が並び、開店直前には数千人の行列になっていました。結局、開店日には28万人の来場者が来たようです(p146)。恐らく、28万人という数字は同日に目の前で開業した「有楽町阪急」来場者も含むかと思われます。その数カ月前に開業したプランタン銀座は初日13万人程度の来場者でした。10月14日までの8日間で200万人が訪れたそうです。

このように「イベント」が「話題」になるように、有楽町西武は全国に対して西武百貨店を認知させる装置として機能することも想定されました(p124)。
結局、オープンから1年間での売上は228億円でした。丸の内エリアへの外商、U251ザ・マーケット などのオリジナルブランドの婦人衣服が好調だったようです。百貨店の1Fといえば化粧品売り場であるのに、有楽町西武の場合は「無印良品」があったようですが売上貢献度はいかほどだったのでしょうか。
百貨店の売上には計上されなかったようですが、「西武クレジット抵当証券」が半年間で35億円売れたり、融資やリースや生命保険の取扱高が一定数あるなど非物販も堅調な滑り出しを見せました。目の前の有楽町阪急の売上は125億円でした(当時の日経記事)。

 

そんな「情報を売る」有楽町西武も1995年には「ファッション」、2006年には「ビューティー&ヘルスケア」テーマにリニューアルするなど一般的なファッションビルになりつつも、結局安定的な利益創出が難しかったと2010年の営業終了のプレスリリースでは伝えています。
跡地にはルミネが入り、比較的堅調にビジネスをしているようです(2019年で222億円の売上)。1984年に西武百貨店ではなくパルコをこの場所に出店させていたらどうなっていたか、ちょっと興味はあります。

 

閉店する新所沢パルコの開業当時の考え(「新しい郊外型の生活の提案」p69)が少し興味深かったです。高島屋の郊外SCとの違いはなんだったのでしょうか。

あと、投資額80億円の筑波西武ではCATVで池袋西武の商品を購入可能で、デリバリカーも走らせていたようです(p160)。システム開発には10億円程度掛かりました(当時の日経記事)。

 

「Ville Saison小手指」竣工当初の話も少し出てきます(p189)。

 

近くにあるデカイ西友(p190)。有楽町西武も筑波西武も新所沢パルコも閉店するのに地味に強そうな小売です。無印良品の文房具はありませんでした。

 

 

いろいろ調べてみましたが、なんだかんだ「有楽町で逢いましょう」の「有楽町そごう」に行ってみたくなりました。

 

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