全球観察

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書評『開幕ベルは鳴った』

渋谷区役所付近の大成建設社員寮であった場所が駐車場となっていましたが(一説によると大成建設による地上げが成功した)、そこに1973年に渋谷パルコが開業しました。もともとはボーリング場を作る計画からスタート(p111)したようですが紆余曲折を経てファッションビルのような不動産ビジネスとなったようです。

 

当時のパルコ前は「区役所通り」となっていましたが、それを「公園通り」とするなどファッションを買う場所ではなく「見せる場所(美術館、劇場、通り、エビゾリングショウ)」をたくさん作ることを重視していたのが斬新だった気がします(p112)。

https://www.parco.co.jp/pdf/jp/library/file160406k_jA45gVax.pdf

 

どちらかというとマーケティングやCMで集客するイメージがありますが、開店した年のマーケ予算は1100万円でした。そこで女性誌とのタイアップ企画で低予算で認知を獲得していきました(p121)。

その当時。ファッション誌や女性誌が非常に増えていました。池袋パルコが誕生した頃のミニスカートブーム、その後のパンタロンやレイヤードルックなどのファッションの多様化。それは女性のファッションを通じた自己主張の強いニーズでした(p108)。

そうした女性のニーズを汲み取るために、多くの優秀な女性の大胆な登用を行いました。それは新聞社や出版社のような自由な議論が出来るための組織論があったようですが(p114)、個人的にはもっと知りたかったですかね。

また、電車から少し離れた坂道にブティック系ファッション街が出来やすいという独特の坂道論(p99)もあり、そしてそうした街をつくることが究極の集客力でもあり、小売を離れた街づくりへの志向が常にありました。ホテルビジネスなどにも進出しましたが、本書出版後に撤退しています(ホテルメゾン軽井沢に関するブログ2009年の記事)。

 

開業翌年の公園通りが個人的にはなんか良いと感じました。公園通りに対して必ずしも自由に歩く場所というイメージが無かったのですが、やはり自動車の多さがこの通りの良さを消しているように思います。

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ただ、この本の3割ぐらいが戦争体験で、↑のようなパルコの話は軽く触れられている感じもありました。パルコの表現の根本にある戦争体験で見た人間の業の奥深さ、を強調されると、戦争体験が無い世代としては会話がしにくい気もしましたがどうだったのでしょうか。

関係ないかもですが、当時のパルコは大正モダニズムの延長にあったのかもななどとちょっと思ったりしました。

 

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