同時代の話だからか、めちゃくちゃ面白い本でした。
各章ごとにコメント書いてみました:
第1章 アレクサ―ウーバープロダクトマネージャーとしてのベゾス
アレクサをアマゾンが世に送り出すまでの話です。ベゾスが発案し、開発チームを自ら指揮していく様子が記載されています。音声認識技術のために買収したスタートアップの技術ではなくディープラーニングを使った技術で設計し直すように決断した箇所が個人的には印象的でした。
あとは、アップルやグーグルなど、類似製品を作りそうな会社にどう先駆けて作り切るかみたいのが面白かったです。結果としてアマゾンがこのような新製品を発表したわけですが、やはりそこはベゾスのリーダシップなのでしょう。そういえばfirephoneなんていうのもあったんですね(こちらは失敗)。
ちなみに、日本では最近Ringというドアフォンがアレクサと連携したみたいですね。
第2章 アマゾンゴー――つまらない名前で始めた極秘プロジェクト
一時期話題になった無人コンビニAmazon Goを世に送り出すまでの話です。記載的にはジェフ・ベゾスの無理なリーダシップで成功しなかったみたいなニュアンスです。
Amazon Go方式とは少し違いますが、JRが武蔵境駅で実験的に作った無人コンビニ に行ったことがあり悪くないと思ったのですが、それが少しずつ日本でも増えている前提でこの章を読んでいると、シアトルという場所で無人コンビニを考える限界、ある種の多様性の重要性みたいのを感じましたかね。
雇用喪失警戒などから「現金決済排除の禁止の州法」がいくつかの州で制定されてしまうなど社会との会話が上手くない点も後章で何回も出てきます。
なお、youtubeで調べてみると今のAmazon Goは意外に悪く無いのではというような動画もありました:
www.youtube.com
第3章 インド、メキシコに進出――カウボーイのように開拓せよ
インド、メキシコへのamazon.comの進出の話です。インドでは、ウォルマートやフリップマートなどの競合がいるなかで、厳しい外資規制を避けつつ、赤字垂れ流してシェアを拡大したり、それが新しい規制を作ってしまったり、結局黒字化出来ていないというような様相が書かれています。
メキシコではCEO探しに難航したようです。Google広告がなければ難しかった辺りが意外でした。
2019年に中国からは撤退していたんですね。
この章を読むと日本では結構順調だったんだなと、感じました。ただ、個人的には、後章の「マーケットプレイス」化を受けた品質低下もあり、最近はamazon.comをあんまり使っていなくなっているんですよね。
小売で勝ち続けるのは難しいです。
AWSが躍進した過程をざっくり書いています。ベゾスとの会議がいかにキツく退職者が多いかみたいなニュアンスも感じましたが、AWS CTOはずっとワーナー・ヴォゲルス さんだったりしますよね。
GCPの方が技術的には高いがAWSの方が政府・大企業に食い込んでいる印象があるので、 CIAがAWSを採用したり、日本政府のシステム基盤でAWSが採用されたした経緯はもっと知りたかったですかね。そういえばパブリッククラウドサービスもグーグルが先に発表しても良かったような気もします。
プライムデーのキャンペーンが大成功にも関わらず、「しくじった」というようなことを言わなければならないCEOの業みたいのも感じました。プライムデーのキャンペーンを全世界でして話題を提供することで新規ユーザー契約獲得・継続向上にもつながっているんですかね。
第5章 ワシントンポスト再建――「民主主義は暗愚に死す」
ワシントン・ポストをベゾスが買収し、デジタル化を通じて、復活させる過程が書かれています。この辺は普段読まない新聞なので良く分からないですね。FTを買収した日経新聞のアプリが結構良いみたいのは感じているのですが。
第6章 プライム・ビデオの成功とハリウッドスキャンダル
Amazon primeのoriginalを世に送り出すまでの話です。独自コンテンツの完成度が高くないまま幹部のセクハラなどに上手く対処せず中途半端に終っているみたいなニュアンスで書かれています。
ただ、寧ろ「ホームカミング」等結構好きなコンテンツが多いので、登場人物を覚えきれなかったですが、興味深かったです。それにしても数千億円規模をコンテンツに投資する決断はすごいですね。
最近日本でボクシングの試合を独占配信してましたが、各国のローカルの動きも知りたかったですかね。
第7章 マーケットプレイス――品ぞろえマシン
楽天市場のように第三者がamazon.com上で売れるようにするある種のビジネスモデルの転換みたいな話です。amazonで買い物するときに中華製品がよく目につくようになったのもたまたまではなく、ベゾスの大胆な決断があったからだったんですね。
楽天市場が全世界で作れなかったマーケットプレイスをアマゾンが作れた理由はやはりこの章の記載から垣間見えるようなベゾスの執念みたいなものなのでしょうか。
マーケットプレイスで詐欺が横行したり商品の事故が多発している点の指摘などを見るとこれでも前に進むという決断を良く出来たなという気もしますが。実際に日本でもマーケットプレイスの商品の事故による訴訟とかもありますし。
第8章 アマゾンフレッシュ、プライムナウ――アマゾンの未来はCRaPだ
日本でも一部地域で使える生鮮食品のお届けサービス「アマゾンフレッシュ」を世に送り出すまでの話です。アメリカではホールフーズマーケットを大規模買収してますが、日本ではどうやっているんでしょうね。
日本ではクックパッドマートが少し近いでしょうか。即日配送だとヤオコーでしょうか。西友(ウォルマート)と組んだ楽天のネットスーパー も一回使ったことあるのですが、即日配送ではないと継続的に使いにくいんですよね。
このようなサービスを突き詰めるとドローン配送とかが出来るような都市を作ってしまったほうが良い気もします。
第9章 物流――ラストマイルの支配から脱却せよ
アマゾンの物流網構築の話です。アメリカの物流大手のサービスがイマイチであること、労働組合が強いことなど、結構厳しい状況からamazon.comというサービスを作ったのだと感じます。
一方で、公共財のフリーライダー的なふるまいも確かに指摘せざるを得ないですね。
最近、デリバリーネットワークの会社をshopifyが買収したニュースもありましたが、アマゾンものんびりはしていられないと思います。
第10章 アマゾン内広告――裏庭の金鉱をみつける
amazon.com内の検索広告事業の話です。検索結果が汚染されるのを防止するために提供していなかったのですが、提供したとたんかなり大きな収益源になってしまったようです。
指摘にある中長期的な収益に関してのマイナスの可能性も面白いと思います。個人的にもamazon.comの検索結果が見にくくなってから利用頻度が減ってきた気がします。
第11章 ブルーオリジン――宇宙開発は一歩ずつ貪欲に
イーロン・マスクとのリーダシップの違いが書かれています。確かにブルー・オリジンは宇宙開発であまり印象ないですね。
第12章 第2本社 ――操業許可を得る
第2本社設立の話です。第8章で感じましたが究極のECをするには街を作ってしまったほうが良い気もしますが、ここで政治的な悪影響を残してしまったのが後々に響くかもしれませんね。ニューヨークでは進出撤退 しましたがバージニア州アーリントン ではどうなるでしょうか。
ちなみに今のシアトル本社のグーグルマップレビューめちゃくちゃ悪いです。シアトルの治安も凄く悪いようです。
第13章 大スキャンダル――ややこしくなる要因
ベゾスのプライベートでの離婚・再婚についての話です。
第14章 強くなりすぎた代償――審判を受ける
アマゾンがアメリカ政府、セラーなどから嫌われ始め、新しい独禁法が必要なのではというような議論が生まれてくる様子を描いています。
この章にも出てくるアマゾンへの規制を求めるリナ・カーン氏ですが、FTC委員長になってからあまり話を聞かなくなったのですが、ある日突然新しい規制の提案があるのでしょうか。
ちなみに、先月アマゾンに労働組合結成を求める団体 の呼びかけでニューヨークでアマゾン初の労働組合が結成されたようです。
第15章 CEO交代――パンデミック
2020年以降のコロナ禍でアマゾン倉庫の労働者がコロナ感染のリスクに怯えつつ、待遇改善を求めたり、内部告発者が解雇されたり、自宅時間が増えたことによる凄い売上が達成された様子が書かれています。
まとめ
めちゃくちゃ面白かったです。
ただ、全体的にベゾスが冷徹な残酷無比なリーダーでアマゾンの労働環境も悪いというようなニュアンスで書かれています。
一方で、グーグルでさえ製品化しなかった新製品をいくつか作ったり、アマゾンの強さの源泉である他国のECサイトにはない徹底さを大組織として実現していたりと、ベゾスのプラス面でのリーダシップももっと知りたいなという気もします。
いずれにせよ、今後のアマゾンの業績は厳しくなるかもなという印象も受けました。