全球観察

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書評「日本の近代 都市へ」

序論や各章で滲み出ている独特の都市論が少し抽象的でよくわかりにくかったです。まあ、ロンドンで生活経験がある方が日本の都市を見たときに感じるなんとも言えないダサさの言語化なのだと思うのですが。


そうした日本の都市のダサさが各論では少し見えてきます。「歴史町並み保存」されるのは江戸時代以前の町並みがほとんどであること、明治以降の町並みで保存されるものはほとんどないこと、明治以降に江戸時代の庭園がほとんど潰されたこと、都市計画よりは区画整理で街が整備されてきたこと、関東大震災後の復興計画が中途半端になってしまったこと、関東大震災のガレキは東京の水路に埋められたこと、戦後の復興計画でも100m道路は3つしか作られなかったこと、などなどでしょうか。

一方で、日本の都市の良さもあるかと思います。小さな商店が多いこと、便利なこと、移動範囲が広いこと、インフラが整備されていること、水道水が飲めること、治安が良いこと、たまに凄く個性的な建築があること。
もしそうした日本の都市の良さも含めた日本の近代都市論だったらもっと良かったかもしれません。
あと、「田園都市Letchworthは確かに素敵なのですが、実際に住めるかと言われると結構難しい気もします。

他に気になったこととしては、戦前の建物の方が天井高が高い趣旨の記述があり、確かに台湾・満州エリアの建築物も含めて現代日本人のスケール感覚と少し違う気がするのですが、何故なのでしょうか。あと、旧植民地で中央政府の都市計画的に作られた住宅エリアは今はどんな感じなのでしょうか。

いずれにせよ、何故日本の明治以降に良質な住宅が供給/蓄積されなかったのか、非常にモヤモヤしながら読みました。

ひとまず自動車会社が作る都市のようなものに期待していきたいです。