凄く面白い本でした。著者はたまにcnbcで見るなぐらいな印象だったのですが、こんなに面白い本を書いていたんですね。
リーマン・ブラザーズが倒産する前後の物語をここまで面白く書けるのが凄い!と率直に思ってしまいました。
もちろん「リーマンショック」「世界金融危機」の全体像とは少し違うのですが、それにしても面白かったです。
情報の処理能力が凄すぎる気もしました。強制的な捜査権があるわけでも無いのに何でここまで細かく書けるのかも不思議です。
WSJのSusanne Craigさんの記事が(この著者が当時書いた記事以上に)一番参照されている気もするので、彼女が書いても良かった気もするのですが、その辺も良くわからないです。
米国議会の特別委員会("Committee Holds Hearing on Causes and Effects of the Lehman Brothers Bankruptcy")の内容も適宜参照されていますが、この議会の内容をはるかに越えている印象です。破産手続きの際の裁判資料(バルカスレポートやギデンズレポート)もありますが、こういうジャーナリストが活動できる背景には徹底した情報公開があるのだな、と感じます。この裁判資料は非常に面白い雰囲気があるので日本語訳はあって欲しかったです。。。
ひとまずこの裁判資料をサラッとdeeplして読む限り、2006年頃のサブプライム問題悪化を契機ととらえて積極的に商業不動産やCLOやarchstone買収などをしたことが経営悪化の背景のようです。それでも480億円以上の報酬(各年累計)をもらえて、財務状況の情報開示に関する捜査をかわせたのは何とも不思議です。
ひとまず、ポールソン財務長官の根回し力が凄いな、と思いました。
なお、2018年にリーマンショック10周年のインタビューを著者がバフェットにしておりこちらもmust watchでした。
https://www.jsri.or.jp/publish/review/pdf/5709/04.pdf
疑問:
・リーマン・ブラザーズの破綻の原因で「サブプライム関連商品」の占める割合。どちらかというと「商業不動産」周りの資金繰り?
・ファニーメイ/フレディマックのバランスシートの内容、何故急激に悪化したのか。
・ベア・スターンズ破綻の原因。どのようなファンドが関係していたのか。
・ベア・スターンズ破綻時の救済にはどのような力が働いていたのか(calyle groupなど)
・ブラックストーンはリーマン・ブラザーズ保有の不動産には興味なかったのか。
・レポ105とは?どのような会計操作をしていたのか?
・bank of americaは「サブプライム関連商品」でバランスシートが傷んでいたのに何故メリルリンチを買収する余裕があったのか。
・wells fargoやciti bankがあまり登場しなかった理由はあるのか。
・AIGは何故ゴールドマン・サックス等とCDSの支払い条件について再交渉しなかったのか。
・リーマン・ブラザーズの各国での清算はどのようなものだったのか。
Pimco Total Return Fund posts strongest day ever | Reuters
Bankruptcy of Lehman Brothers - Wikipedia
Maiden Lane Transactions - Wikipedia
Lehman Brothers Holdings Inc. (Chapter 11) Case # 08-13555
https://www.nysb.uscourts.gov/sites/default/files/opinions/171257_14612_opinion.pdf
リーマン破たん「最悪の条件重なった」、レポ105に問題ない=ファルド元CEO | ロイター
米リーマン元CEO、「レポ105」訴え退けるよう要求-会計基準に準 - Bloomberg
MUFGとモルガンS、証券調査部門など統合へ-提携関係を深化 2023-7-18- Bloomberg
FRBのバランスシートのメモ⑤:ベアー・スターンズの救済とFRBのバランスシートの関係|服部孝洋(東京大学)
FRBのバランスシートのメモ④:AIGの救済とFRBのバランスシートの関係|服部孝洋(東京大学)
FRBはリーマンを救えた? - himaginary’s diary
Tracking Lehman's Real-Estate Portfolio, Three Years Later - WSJ