全球観察

全世界の様々なトレンドを記録していきます。

書評『私たちの真実』

現・アメリカ副大統領のカマラ・ハリス氏の2019年の本です。「検察官の選挙」「アメリカの刑事司法改革」「刑事司法データを使った教育プログラム(back on track無断欠席防止プログラム)」「サブプライムローン貸付時のアメリカのスルガ銀行的不正融資問題」など興味深いトピックが多いのですが、少し共感しにくいというか読み辛い本でした。

人種とかのアイデンティティー政治が強調されすぎているというか。「女性」「黒人」を意識しすぎているようにも感じました。

警察官や検察官の人種差別は未だに存在する!それは問題だ!みたいな文章が多いのですが、それを解決することで白人を含むアメリカ社会全体にとって良いことだみたいな文章は少ない印象でした。p95で刑事司法に多様なバックグラウンドを持つ者が参加するのは良いことだみたいな記載がありますが、そこをもっと深堀りしてほしかったです。

 

メモ:

ナチスの迫害から逃れるユダヤ人でさえアメリカ入国は拒否された経緯がある p177

www.history.com・2015年段階で、選挙で選ばれた検察官の95%が白人で、79%が白人男性 p67

Racial Disparity Among Prosecutors and Trial Judges Translates to Unequal Justice, Activists Say - The Appeal

 

 

quanqiu.hatenablog.com

Looking Back on Kamala Harris’ Record in California | Archives | sfweekly.com

Attorney General Kamala D. Harris Announces the California Homeowner Bill of Rights to Take Effect on January 1 | State of California - Department of Justice - Office of the Attorney General

Attorney General Kamala D. Harris Announces Seven Arrests in $6.2 Million Mortgage Fraud Scam | State of California - Department of Justice - Office of the Attorney General

Attorney General Kamala D. Harris Secures $18 Billion California Commitment for Struggling Homeowners | State of California - Department of Justice - Office of the Attorney General

Attorney General Kamala D. Harris Announces $300 Million Settlement with JP Morgan Chase | State of California - Department of Justice - Office of the Attorney General

California accuses JPMorgan of fraud in credit-card-debt collection

 

www.youtube.com

「米国初のベーシックインカム」超予想外の成果 もし24ヶ月間500ドル支給されたら何をする? | ニューズウィーク日本版 | 東洋経済オンライン p299

日本人の知らないアメリカ 選挙制度㊦:人種差別を禁じ黒人の権利を保障する「投票権法」をずたずたにした最高裁判決 中岡望 | 週刊エコノミスト Online p144

書評『暗闘』

2016年頃の安倍さんの外交に関する本です。

2014年のクリミア危機で制裁の足並みを揃えなかったこと(p119)、2017年に2+2の日露会議をしたこと(p147)など、2022年2月からのウクライナ戦争を考慮するとロシアに良いように利用された感じは少ししました。日露の領土問題の解決や平和条約策定はロシアからも、そこまでモチベーションは無いんだなという印象も受けました。

ja.wikipedia.org

www.mofa.go.jp

飯田グループが微妙にロシア極東進出しているのも安倍さんとプーチンの合意が関係しているっぽいですね(p151)。

sputniknews.jp

数年後に読むとまた発見がある気もします。

 

 

A Proposal for the FY 2016 Defense Budget | The Heritage Foundation

プーチン・ロシア大統領の訪日(結果)|外務省

書評『スターバックス再生物語』

2008年9月のリーマン・ショック前から発生していたスターバックスの売上低迷からの復活に関する本です。

同時期の日本では日本レストランシステムが「星乃珈琲」という新しいブランドを作りましたが、その過程に関する本(『星乃珈琲店誕生物語』)と並行して読みました。個人的には、恐らくハワード・シュルツCEOの意図とは裏腹に、スターバックスというかアメリカの会社で働く厳しさやのようなものを感じてしまいました。

 

躊躇ないリストラや店舗の閉鎖

日本レストランシステムではリストラはなさそうです。その代わりに変形労働制のアルバイトが管理者かどうかの日本レストランシステム事件のようなものはありました。「星乃珈琲」の誕生も俵屋や五右衛門やモーツァルトの店舗がダメだったので業態変更の要請が背景にありました。

スターバックスアメリカで2008年7月に600店舗を閉鎖することを発表しています(p199)。それらの店舗はサブプライムローンによる住宅ブームが盛んだった地域が多いようです。なお、追加の300店舗の閉鎖も2009年初頭に発表しています(p334)。

ミッションが良くわからない

スターバックスといえば「サードプレイス」というミッション(p23)があるかと思えば、「コーヒーの重要性」みたいなことも強調されていて、前者を重視するならばスタバ店舗内でサンドイッチなどのフードを販売しても良い気がしますが、ハワード・シュルツCEOは激おこ(p54)でした。一時サンドイッチなどのフード販売は撤廃(p120)しますが、結局復活します(p295)。また、シアトルではワインやビールの提供も実験的にしています(p411)。消費財ビジネスも凄く発展していますが、どういうミッションなのか良く分からず(p403)。

「星乃珈琲」の場合は、40店舗目ぐらいでコンセプトが見つかったみたいな記載がありましたが、日本市場への最適化がミッションのようなものなのでそういう意味では分かりやすい気がします。

スターバックス体験とモバイルオーダー

スターバックス体験のコモディティ化」という2007年2月の内部メモの流出で当時のスターバックスが店舗での体験が劣化していることを示唆していますが(p36)、その後のモバイルオーダーではここで挙げられている問題がほとんど当てはまる気もします。まだ、労働環境(p103)も一層劣化しているようです。モバイルオーダーは膨大な利益をもたらしましたがスターバックス体験の劣化どころか労働組合結成の背景でもありハワード・シュルツCEOが米国議会に呼ばれたりもしています。

www.youtube.com

外食でモバイルオーダーを取り入れたのはスターバックスが最初な気もしますが、店舗でのオペレーションを考えたら相当躊躇すると思います。実際に日本の外食のモバイルオーダーは未だに中途半端かと思います。店舗での「スターバックス体験」を強調しているとき、モバイルオーダーを投入するためにどういう議論をしていたのか想像もつきません。ハワード・シュルツCEOはSquareの社外取締役をしたり、スタバ店舗の決済をSquareにしたりしていましたが、そうした経験も活かされたのだと思います。

一時的な景気の悪化の問題に過ぎないのでは

スターバックスを含めた外食どころか消費全体が落ち込むなか、スターバックスの停滞は一時的な景気動向の問題である気もします(p88)。実際にそのような認識もしていたようです(p189)。この本に記載されている改善策(p176,p405)は必ずしも創業者では無くても出来る気もします。ただ、そういう考え方は甘いのだなと思いました。景気が上向きになってからスターバックスが躍進したのは事実だと思います。何かスターバックスというブランドが非常に強くなった印象です。
実際にアメリカでの標準店舗の売上は年間100万ドル程度(p197)と月商1000万円の星乃珈琲と物価水準を考慮すればそこまで変わらない気もしますが、『星乃珈琲店誕生物語』には加古川店で出店の際にスターバックスが出店した超好立地は賃料が2倍で星乃珈琲では難しかった旨の記載があり、スターバックスのブランドの強さを感じました。

その他

スターバックスの店舗スタッフの献身性を示すエピソードとして、常連客の腎臓移植手術の際に腎臓を提供した事例を紹介しています(p153)が、これは正直ビックリしていましました。

 

メモ:

・4つのコーヒー倉庫、5つの地区焙煎工場、生鮮・非生鮮食品の配送数は83000件。大半のお店では一日一回の配達。 p237

・2007年11月ごろから既存店売上高が著しく減少 p62 2009年4月に反転 p343

2008年2月に7100店舗を1日閉鎖し13万人のバリスタの研修をしたコストは600万ドル p15

・リーダーの能力とは他の人に自信を与えること p392

・2007年のconsumer reportsではマクドナルドのコーヒーの方が評価が高かった p112

consumerist.comwsj紙は600店舗の閉店を悲しむ声の紹介 p209

・新しいフラペチーノのような「ソルベット」の市場投入は失敗 p217

・コーヒーを作る過程で「リーン」を取り入れた(wsj紙) p362

 

 

このタイミングで復帰したのは、もちろんスターバックスの復活という創業者にしか分からない本能的な何かもあるのでしょうが、将来の大統領候補としての出馬も視野に入っているような印象もありました。実際に地域コミュニティとの連携のような記載がちらほらあった気がします(p207など)。また、2008年の選挙では、選挙に行ったらコーヒー無料のようなキャンペーン(p268)やオバマ大統領の就任式のボランティア参加でコーヒー無料のようなキャンペーンもしています(p337)。

www.youtube.com

ただ、これだけ全米に店舗があり、地域コミュニティとも関わっていたような人でも、大統領選挙では結局撤退しています。

www.nikkei.com

 

 

quanqiu.hatenablog.com

創業当初のコーヒー調達責任者 p20

https://archive.starbucks.com/record/dave-olsen

https://www.linkedin.com/in/jennifer-ames-karreman-6124b19

 

パイクプレイスロースト」を作ったスターバックスのコーヒースペシャリスト p113

https://www.linkedin.com/in/andrew-linnemann-3781216/

 

clover周り p120

Clover coffee machines catch Starbucks’ fancy | The Seattle Times

Thermoplanのマストレーナ p158

スイスがコーヒーマシンの世界大手になるまで - SWI swissinfo.ch

via周り p316

https://archive.starbucks.com/record/don-valencia

 

コーヒーの倫理的調達 p156

https://www.conservation.org/japan/partners/starbucks-challenge

 

改革の相談をしたコンサル p64

https://www.kekstcnc.com/our-team/james-n-fingeroth

 

PR周りのコンサル p97

10年で株価は13倍 Starbucksを復活させたハワード・シュルツの戦略を支えたパーパス・ドリブンな組織改革 #宣伝会議 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議

 

Wieden+Kennedyとの契約終了、BBDOとの新規契約p271

Starbucks Selects Wieden & Kennedy - The New York Times

https://adage.com/article/agency-news/real-reason-wieden-quit-starbucks/131323

Starbucks taps BBDO as agency of record | Nation's Restaurant News

 

新しい店舗デザイン p187

Arthur Rubinfeld - Wikipedia

 

創業期にフラペチーノ等をデザインしたチーム p325

https://www.montana.edu/news/mountainsandminds/article.html

 

中国等の新興国の担当 p300

https://www.linkedin.com/in/jinlong-wang-32b61916/

https://www.linkedin.com/in/hermanuscategui/

 

創業当初の投資家 p166

Remembering Il Giornale, the Starbucks predecessor founded by Howard Schultz – Ryan Ferguson

John Rodgers | Obituary | Seattle Times

`Abusive’ ambassador says she filed rebuttal | The Seattle Times

 

leed認証 p350

https://stories.starbucks.com/press/2018/starbucks-announces-global-greener-stores-commitment/

書評『星乃珈琲店誕生物語』

「星乃珈琲店」というコーヒーブランドがどのように作られたのかを日記形式で追える非常に興味深い本でした。2008年のリーマン・ショック後前後の「スターバックス再生物語」も並行して読みましたが、だいたい同時期の話で両方とも興味深く読めました。

スターバックス再生物語」とは違って、エラそう・威張り散らかしているような印象、全体的に安っぽい印象が最初の数ページではあったのですが、正直こちらの本の方が面白かったかもです。

面白かったのは、「星乃珈琲店」のコンセプトが結構ぶれながら収斂していく過程です。様々な地域で出店して、様々な反応を見ながら、試行錯誤していくのは簡単なように見えて、土地交渉・物流などの相当のノウハウが無いと無理だと思われます。また、グループ会社の他の店舗で流行ったメニュー(パン、ソーセージ、焼き菓子)も取り入れたりと、まさにこの著者と「グループの総力が結集したブランド」(p246)であることを感じました。

メモ:

・「朝食需要」「パン」などがブランドコンセプトのきっかけ p41

ドトールエクセルシオールカフェで出せない「プレミアムコーヒー」も出したい p55

・1号店の蕨店ではコーヒー専門店でパンも売るぐらいのコンセプトだった。初日の売上は20万5966円。 p56

・星乃珈琲のスフレは2店舗目の新宿東口店で自社物件の居抜きで都市型での実験をしようとしたところ、たまたまピザ窯があったから出してみた。ただ、当初は全然売れなかった p67

・4店舗目は愛知県の豊川郊外というこれまでとは全く違うエリア。「コーヒー専門店」と「ファミリー向けレストラン」の2つのコンセプトが混じっていたが、コーヒーよりも食事メニューの強化を優先した p81

鶴ヶ島店は俵屋からの業態変更だが、「男性」「女性」「子供連れ」「シニア」などの客層の広がり、「モーニング」「夕食後」までの客が途切れない、「来店頻度の増加」などの違いを報告されブランドが強くなっていることを実感した p101

・オープンから2年後の40店舗である習志野店と41店舗目である片瀬店は土地を自社保有していた。この両店舗は外装を和装にしたが、この頃にブランドコンセプトが固まってきた p115

・姫路店はオフィス街の近くだったが、「高齢者」「ファミリー層」ではなく「サラリーマン」「自営業者」「若い女性」が多い立地だった。「高齢者」が多い郊外の立地は売上が徐々に下がる傾向があるが、新宿や銀座も含めてこういう立地は売上を徐々に伸ばすことがある p206

・オープンの際の客の入りで、大体の成否は見当がつく p220

・オープンしてから徐々に口コミで客数が増えるのが一番良い p84

・月商は1000万~1200万円になるように設定している p127

・ショッピングセンターに出店する際の初期投資は坪130万円程度。30坪だと3900万円。撤退費用は900万円。5年間で撤退すると、(3900+900)/60で月80万円のコスト。30坪で800万円/月の売上があっても利益が出ない。 p152

・償却は定率法。店舗は10年経てば償却が終わる。そうした店舗が200店舗あり、貴重な資産。リニューアルだと初期投資が1/3ぐらいで済む。 p161

・日本のビルオーナーは売上を上げていても定期借家契約をもとに追い出したがる p156 新宿アルタなど p137

加古川店出店の際、既に好立地に出店していたスタバは賃料が倍だったのでそこでの出店は無理だと感じた p209

・「紅茶」専門店のモーツアルト の業態変更店舗である栄地下店での星乃珈琲の繁盛ぶりを見て、日本で「紅茶」ブランドが難しいことを感じた。 p129 p70

・スパゲッティーの五右衛門は消えゆくブランド p97 ただ、未だに新規出店はしている印象。

・星乃珈琲のブレンドコーヒーの40%はキューバ産 p236

シンガポールでは好調だが、上海ではだめだった p111 

今はシンガポールに8店舗あり、中国撤退した代わりにマレーシア・インドネシア・台湾に進出しているんですね。どの国もショッピングセンターが多い印象です。

個人的な体験

個人的な体験として、星乃珈琲は2010~2015年頃にp120の六本木店が最初だった記憶なのですが、2013年4月にオープンしていたので、オープン当初に行っていたようですね。ただ、それまでに星乃珈琲の存在は知っていた記憶もあり、もしかしたら別のお店にも行っていたかも知れません。いずれにせよ、星乃珈琲は「都市型」「やや高いコーヒー」「ややインテリアにこだわる」ぐらいのイメージでした。

 

その数年後蕨店に何かの都合で行って、「郊外」の星乃珈琲は結構良いなと思ったのですが、実はその蕨店が第1号店(2011年3月18日)だったのですね。隣のパン屋の存在も認識していましたが、深くは考えたことはありませんでした。

 

その数年後にp114の習志野店(2012年12月)にも行きましたが、「郊外」だけでなく「蔵」「大きな窓」なども印象的でした。この本では「郊外」では「蔵」のイメージで展開していたようですが、最近は「大きな窓」「現代風」な印象です。おそらくその分岐点は高井戸店(2014年4月)な気がします(p215)。
寧ろ、星乃珈琲の「郊外」はカッコいいので、中途半端な郊外店を見ると少し残念に感じます。8店舗目の八王子堀之内店(2012年2月)とこの本には出てこない南大沢店(2021年12月)の違いなども印象的です。

最近の出店傾向をみるとショッピングセンターが多い気がするのですが、この本で批判されている定期借家契約で何か有利な展開があったのでしょうか。

 

 

architecturephoto.net

www.wooddesign.jp

computer-philosopher.hatenablog.com

realsize.net

8dabe.com

1st-sekkeicompe.hoshinocoffee.com

 

hoshino-shoplist.cafe-tatsujin.com

シンガポールでのメニュー:

https://d15k2d11r6t6rl.cloudfront.net/public/users/Integrators/c2211f6c-ac34-46d9-9fcf-28946864c5ea/business_3390/Menus/New%20Grand%20Menu%20Mar%2023.pdf

 

zangyodai-bengoshi.com