全球観察

全世界の様々なトレンドを記録していきます。

書評「ブリッツスケーリング」

少し冗長的な感じがしましたが面白かったです。

これぐらい一気にスケールするのがビジネスのアイデアなのだということを感じます。また、急成長するぞ!という精神を奮い立たせてくれるような本である気もします。

まずはディストリビューションが超重要というのも参考になりました。

キャッシュフローのマネジメントをどうするか、税金をいかに払わないか、何故急成長しようと思って出来ないのか、急成長のためのリソースの投入とは具体的にはどのようなものか、フェーズごとの間違った人事の具体例なども知りたかった気もします。

 

書評「7 POWERS――最強企業を生む7つの戦略」

非常に面白い本でした。

あるビジネスが継続的にキャッシュフローを創出するのは経験的に7つの力があるからだ、とのことですが読んでいて確かにそうだなと感じました。

強いて追加するならば、「規制」も重要かなと思ったりしました(e.g 電波法に守られるテレビ局やケータイ会社、薬事法に守られるドラッグストア)。

ネットフリックスの事例が多かったですが、「ネットワーク中立性」で参入障壁が作れたかとか妄想したりしました。

あと、やはりnetflixが宅配レンタル事業をしていたのもストリーミングサービスを展開することを前提としていたみたいですね。「宅配レンタル事業」でユーザー獲得・ユーザーデータを分析するプロセスの形成・人材獲得・ブランディングなどで一定程度パワーを形成していたなか、オリジナルコンテンツの配信という「発明」やインターネット速度の高速化などの技術革新という「外部環境」があり強力なパワーとなった、というようなイメージでしょうか。
ただ、netflixはエンドロールがゆっくり楽しめないと感じており「netflixで見る」体験を作りきれなかった気もしています(同じコンテンツがamazonnetflixとdisneyであったときにどれほどの方がnetflixを敢えて選ぶのでしょうか)。
netflixといえばビックデータのイメージもありますが、作品作りに関しては確かに作品によってハマるときはハマるので上手にデータを活用できているのかもしれません(ただ、結局長時間を費やして得たものは何だったのかみたいな感覚もあります。netflixのドラマを複数回見る方はどの程度いるのでしょうか)。
見たい作品に関してはnetflixのレコメンドよりも、誰かのtweetやブログ記事とかの方が自分にとっては大事です。良いnetflixの紹介ブログ記事が少ない気もするので、そこをテコ入れして欲しかったところです。

netflix.shopなどのECの方向性、ゲーム配信の方向性、広告プランなどの新しい視聴プランの方向性がどうなるのか引き続き見ていきたいです。


1981年8月12日のIBM PC発売までにインテルが「規模の経済」「ネットワーク経済」「乗り換えコスト」のパワーを獲得していたことが、その後の強力なキャッシュフローの創出につながった、という指摘もタイミングの重要性を感じられて興味深かったです。

いつか原書で読んでみたいです。

 

書評「Measure What Matters」

非常に参考になる本でした。

目標管理には1960年代にHPが作ったと言われるMBOがあったりOKRも組織によりいろいろなやり方があると思いますが、どのようなやり方が良いのかのヒントがたくさんあるように感じました。

個人的に良いなと思ったのは、全員のOKRを「公開」すること、項目を少なくして「フォーカス」すること、人事評価との関連性を薄めること、でしょうか。

また、強い組織は、全員のOKRを作る過程、OKRが失敗しそうなときのリカバリー、OKRが失敗したときの改善、これまでの結果から次のOKRを作る過程、その他OKRを使ったコミニュケーションが洗練されているのだろうと感じました。

一方で、ここで紹介されているzumepizzaなどは一度サービスをクローズされてみたいです。

www.restaurantbusinessonline.com

最近のgoogleからは必ずしもムーンショット的な成果があるようにも思われません。

OKRでサービスを改善するだけでなく、OKRのやり方自体も継続的に改善させていくことが重要にも思います。

 

書評「日本の近代 都市へ」

序論や各章で滲み出ている独特の都市論が少し抽象的でよくわかりにくかったです。まあ、ロンドンで生活経験がある方が日本の都市を見たときに感じるなんとも言えないダサさの言語化なのだと思うのですが。


そうした日本の都市のダサさが各論では少し見えてきます。「歴史町並み保存」されるのは江戸時代以前の町並みがほとんどであること、明治以降の町並みで保存されるものはほとんどないこと、明治以降に江戸時代の庭園がほとんど潰されたこと、都市計画よりは区画整理で街が整備されてきたこと、関東大震災後の復興計画が中途半端になってしまったこと、関東大震災のガレキは東京の水路に埋められたこと、戦後の復興計画でも100m道路は3つしか作られなかったこと、などなどでしょうか。

一方で、日本の都市の良さもあるかと思います。小さな商店が多いこと、便利なこと、移動範囲が広いこと、インフラが整備されていること、水道水が飲めること、治安が良いこと、たまに凄く個性的な建築があること。
もしそうした日本の都市の良さも含めた日本の近代都市論だったらもっと良かったかもしれません。
あと、「田園都市Letchworthは確かに素敵なのですが、実際に住めるかと言われると結構難しい気もします。

他に気になったこととしては、戦前の建物の方が天井高が高い趣旨の記述があり、確かに台湾・満州エリアの建築物も含めて現代日本人のスケール感覚と少し違う気がするのですが、何故なのでしょうか。あと、旧植民地で中央政府の都市計画的に作られた住宅エリアは今はどんな感じなのでしょうか。

いずれにせよ、何故日本の明治以降に良質な住宅が供給/蓄積されなかったのか、非常にモヤモヤしながら読みました。

ひとまず自動車会社が作る都市のようなものに期待していきたいです。