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書評『Wall Street And The Financial Crisis: Anatomy Of A Financial Collapse』

世界金融危機後に米国議会が調査した報告書は何個かあるみたいですが、そのうちの1つです。政治的にどういう意味があるのか良くわからないですが、トッドフランク法成立後(OTSは廃止)に報告書は公開されたようです(小委員会のサイト 、提出された資料を集約した激重ファイルny times版)。

内容的には、「ワシントン・ミューチュアルの破綻」「OTSなど規制当局のあり方」「格付け機関のあり方」「ドイツ銀行ゴールドマン・サックス利益相反取引」の4つです。


ただ、内容の半分ぐらいが「ドイツ銀行ゴールドマン・サックス利益相反取引」でさらにその8割ぐらいがゴールドマン・サックスの取引でした。deeplの翻訳が良くなく、必ずしも理解できなかったのですが、2004~7年頃のゴールドマン・サックスのトレーディング部門の好業績の背景が何となく理解できました。「世紀の空売り」とか「史上最大のボロ儲け」とかの10倍ぐらい情報量がありました(アメリカ議会の調査権限凄い)。

ワシントン・ミューチュアルの破綻」に関しては、最近あったシリコンバレー銀行にも似ているような気もしました。また、この銀行を買収したJPモルガンが巨額和解金を払うはめになる雑な融資の実態も少し理解できました。

OTSなど規制当局のあり方」に関しては、FDICとの規制縄張り争いがあったのが面白かったです。ただ、何故OTSの規制がゆるゆるだったのかは良く分からなかったです。

格付け機関のあり方」に関しては、格付け機関の意見表明を参考にしすぎる機関投資家のガバナンスとかをもっと知りたかったです。

 

ここまで議会に露骨に批判された報告書の公開後にゴールドマン・サックスの株価は少し下がったようですが、そこまでビジネスには影響なかったようです(公聴会前後のゴールドマンのプレスリリース)。この報告書をまとめたレビン議員は司法省に犯罪捜査を要請したようですが、ゴールドマン・サックスは不起訴となりました。

 

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Carl_Levin

https://en.wikipedia.org/wiki/Washington_Mutual

https://en.wikipedia.org/wiki/Wall_Street_and_the_Financial_Crisis:_Anatomy_of_a_Financial_Collapse

ABACUS 2007-AC1 Term Sheet

Goldman Sachs Abacus CDO

Washington Mutual (WaMu): How It Went Bankrupt

 

Senate Report Lays Bare Mortgage Mess - WSJ

 

Goldman Sachs' House of Junk (Fortune, 2007) | Fortune

How Goldman Won Big On Mortgage Meltdown - WSJ

合成CDO「アバカス」および「デッド・プレジデンツ」の訴追

アメリカにおける銀行業務と証券業務の利益相反問題

 

ゴールドマン罰金3000億円 リーマン後も続く米欧銀不正 - 日本経済新聞

破綻銀行を食い物にした「ゴールドマン」極悪取引 SVB相手の破廉恥な取引が追及の的になる必然 | The New York Times | 東洋経済オンライン

 

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