全球観察

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書評『不思議の国のM&A』

2006年~2007年頃のM&ATOBに関する議論が分かるような本でした。

三角合併導入に関する章を読んでいて、日本の経済界がこの頃から既に保身的であったのが印象的でした。経団連三角合併導入の延期を申し入れたそうですが、欧米の同業他社との時価総額が違いすぎる点を根本的に解決しようとする感じには見受けられませんでした。

p259のATT&TとNTTの会社分割がどれほどその後の富の創造に違いが出たかの表は結構衝撃的でした。「スピンオフ」と「子会社上場」。。。

TOBで価格を言わないとかディスカウントTOBとか良くわからないですね。TOBでは無いとはいえ、楽天のTBSへの経営統合の提案に価格などの条件が全く無いのも面白いです。
堤氏の西武インサイダー事件のきっかけとなったのも「株式持ち合い」が解消化されるなかでの安定株主需要が背景にあったんですね。みずほのシステムがこんなにトラブル起こしている原因の一つにこの頃の「対等合併」精神があるのでは、と認識できたことも一つの収穫でした。

私有財産制度でも税制によって創造される富が全然異なる(p69,p265,p268)、というのは不動産分野の歴史に関する本を想起しました。

最終章のトヨタの資本政策に関するところだけは勝者の雰囲気を感じました。

 

 

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