成功する住民運動(年表)とはどういうものか、わかるような本でした。
以前読んだ『西武王国鎌倉』でちらっと広町の件が触れられていたので気になっていたのですが、読んで良かったです。
地域の複数の自治会、政党、地域の著名人、市、市議会、県、県議会、選挙、他の地域の住民、開発業者、融資する金融業者、国、そうした様々なステークホルダーとの連携にどれほどエネルギーが必要なのか良く分かりました。
主体になっていたのが住民である現役のビジネスマンたちだったのも印象的でした。既存住人のエゴ(NIMBY)のような議論(p79)、ある自治会とのトラブル(p144)もあったようですが、広く支持者を集めたのはすごいと思いました。
事業三者からの37ヘクタールの用地取得は、113億円でした。その取得費用は、国からの補助金が20億円、神奈川県から20億円(かながわトラスト基金が財源)、鎌倉市の一般財源が7億円、鎌倉市債から31億円、鎌倉市緑地保全基金から35億円(鎌倉みどり債 から20億円)となりました(参考)。恐らく一括払いだと思いますが、2003年頃のゼネコン不況で倒産の危機にあった事業者と金額面で有利に交渉できたのでしょうか。
広町緑地を公園とするための工事費2.8億円、毎年の管理費5000万円想定されていました。なお、事業者の一社であった山一土地株式会社は特別清算しました。
11ヘクタールを別途用地買収して広町緑地は48ヘクタールとなったんですかね。
いずれにせよ、それは、鎌倉市の単年予算の評価KPIである一人あたり公園面積の改善にもつながり、更には歴史・緑など地域アイデンティティー形成にもなりました。
広町緑地の大部分は市街化区域のままで、一部に市街化調整区域があるのは何故なのかは良くわかりませんでした。
逆に言うと、成功しない住民運動がどういうものかも良く分かるようになった気もします。
神宮外苑再開発反対とかはちょっと厳しい気がしました。「反対だけ」「地元の住民の意向が良く分からない」あたりでしょうか。
下北沢の再開発は、住民の声を聞きながら、比較的上手く行った例に感じます。ただ、補助54号線の道路計画がまだあるようです。
補助132号線の道路計画がある西荻窪は市長を出すレベルの運動となりましたが、これからどうなるでしょうか。ただ反対とするのではなく、新しい交通像を提示出来たらすごいと思います。
千代田区番町の日テレ旧本社跡地のタワマン計画は良くわかりません。このエリアの土地を低層利用するべきだと積極的な根拠を見出すのは結構難しいかもしれません。大名屋敷とかならばわかるのですが。ただ、住民団体は著名人も多くどういう議論になるのか面白そうです。
以前読んだ国立の景観問題も、受益者負担の観点はどうあるべきか、90億円の土地をどのように自治体が買い取るか、その土地をどう利活用するべきか、の具体論が必要だった気がしました。
この緑地を次の住民世代も適切に保存してくれるでしょうか。
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