全球観察

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書評『景観にかける』

国立市あるマンション 建設を巡っての反対運動に関する本です。

結論箇所が興味深かったです:

ある日、突然森が更地になり、病院、学校、工場の跡地に高層マンションが建つという現実を目の当たりにして、マンション問題とは「建築問題」というよりはむしろ「土地利用の問題」であるということがはっきりわかってきた。

 

ひとまず、用途地域を見ると、なぜそこだけ第二中高層住居専用地域なのかという感じの線引がされていますが、その点については良く分かりませんでした。

 

この第二中高層住居専用地域の東側(富士見台1丁目辺り)を見てみると、1980年代に比べて2007年頃の写真を見ると駐車場が多い気がします。相続イベントがあったのだと思われます。相続時の売却価値を想定していたのでしょうか。
なお、このマンションが建設された中3丁目は地区計画が制定されます。それがこのマンションの建築確認申請時にも有効であったかは裁判の重要な争点でした。

 

業者側のパンフレットを見ると(p156)、この並木の景観をマーケティングの核としているので、少しフリーライダー的な印象は受けます。東京海上日動から90億円で購入したそうですが、低階層の別邸的高級マンションは作れなかったものなのでしょうか。

堤康次郎氏が宅地分譲した街はどこも当時の住宅があんまり残っていないのも不思議ですが、正直google mapsストリートビューで見る限り、この街の並木は確かに印象的ですが、全体として街並みの景観がある感じはしないですかね。

国立市では、1994年に景観条例制定運動が始まり、1998年に景観条例が制定されていたようですが、中身を見てもちょっと抽象的な気もしないでもないです。。。

ところで、現地には行っていないのですが、並木は今何mぐらいなんですかね。「並木通りから富士山が見えた」景観利益は並木が成長したらどうなるのでしょうか。

この並木の維持管理費は誰がどのように負担しているのかも気になります。この並木道周辺の住民は地価上昇やその他利益を得ているので受益者負担があるとして固定資産税の他に何か追加負担していたのか、は良く分かりませんでした。

株主の利益を考慮せざるを得ないとはいえ、住民の反対があったにも関わらず、東京海上日動がマンションデベロッパーに土地を売却した経緯も気になります。もし自治体が公拡法の先買い制度を使えたとしたらどのような土地になっていたのでしょうか。

 

日本の町がこういう風に良くなるイメージがあんまりないです。。。

 

 

メモ:

・満鉄病院で生まれ、その隣の関東館で育った。大連は寒かったが、住宅内は暖かかった。進学時に両親の実家のある富山で生活したが、こたつで部分的に温まるような段のとり方は寒かった p31

高島屋に就職しベビー系の商品を独自開発するなどSPA的な業務に従事した

・1970年の建築基準法改正にともなう用途地域見直しの際に国立市では「一種住専運動」があった。一橋大学南側は基本的に第一種住居地域になった。 p83

住民運動中は地域住民からの疎外感があった p174

少数与党と野党である自民党/公明党会派多数の対立も背景にあった。地方議会で会派は必要なのか。 p250

秋田市保戸野中町のマンション開発は地元の地主が土地を購入して中止になった p260

・本来開発許可が出るべきではない開発許可がほぼフリーパスで出ている p275

 

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