全球観察

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書評『ウーバー戦記』

文章うますぎて、翻訳も凄く良くて、あっという間に読んでしまいました。u-nextで先に「スーパーパンプト」を見ていたからかもしれませんが。

 

ジャーナリストが書いただけあって、Uberという会社の問題は結構まとめられているのだと思います。ただ、ここに書いてあるような社内セクハラ・個人情報の不適切利用・個人情報漏洩・Uberドライバーの労働問題等々がありながらも結局全世界の消費者に受け入れられているのも事実で、なかなか難しい気もしました。

肝心の配車アルゴリズムなり変動価格のアルゴリズムなりUI/UXなり全世界での本人確認なり全世界でのマーケティングなり、Uberが全世界の消費者に受け入れられたプロダクト開発やオペレーションに関しては必ずしも良く分からなかったです。社内セクハラや個人情報周りは当時のシリコンバレーの雰囲気をある程度反映していたのかもしれません。

そういう意味で、少しジャーナリスト的観点が多過ぎる気もします。この本を読んで、当時UberLyftとそれ以外の何かに投資しろと言われたら、間違いなくUberに投資していたと思います。


モビリティーの問題は全世界の各地にそれぞれのカタチであるのでしょうが、Uber的手法により各地でそれぞれの問題が認知されつつもUber的手法によりその解決が警戒されてしまったところがUberの限界なのかもしれません。自動運転なども中途半端になってしまったのが勿体ない気もします。

この本出版後に中国のdidiも上場をしますが、結局上場廃止になります。中国市場は想像以上に難しい気もしますし、まだまだ色々な可能性もある気もします。


以下メモです:

Uberは創業当初は高級ハイアーの配車アプリ

 

・創業当初は高級ハイアー会社の経営者と提携していた p117 各自治体でどのように初期の運転手を獲得していたのかは良く分からない(craiglistなど?)

・2010年10月20日にタクシーを規制するサンフランシスコ市交通局より事業の停止命令が出されたが、根拠となる法律は良く分からなかった。ハイヤーやリムジンの規制はカリフォルニア州だった。その矛盾をついて、結局罰金も払わなくて済んだ。カリフォルニア州にリムジン会社としての営業登録もしなくて済んだ(でも結局2016年に登録している?)。

・業務停止命令後の2010年11月23日にカラニックがCEOに就任する。創業者ではなかったが、株を譲渡してもらう契約を結んだ p111

・2011年10月19日にニューヨーク市では営業所登録をした。

ポートランドフィラデルフィアなどでは違法だったが、本人確認時に様々な個人情報を使い規制当局者を判別する「グレイボール」システムを使い規制当局をだまし、利用者を増やし、利用者の声を受けて最終的には規制が変更となった。

www.youtube.com

・他にも、あるユーザーの位置情報をリアルタイムに示す「ヘブン」やLyftのアカウントを登録しているドライバーを割り出す「ヘル」などのシステムがあった。

・「iPhone」の登場により、「GPS」「加速器計」「WiFi」接続で「位置情報」の取得が可能になった。「Google Maps」で車とユーザーの位置が可視化出来た。アプリ内の「決済」も可能になった。「SNS」を使ったマーケティングやロビイングも上手く活用した。

・本人確認はHireasに外部委託していた。指紋紹介を含む身元調査や制帽の着用廃止などのロビイングを各自治体で行なった。 p194

・不正利用防止のため、アプリの様々なデータから「指紋」を作れるInAuthのサービスを使っていた。それはアプリストアの規約に反していた可能性もある p253

サイドカーの台頭やLyftのロビイングもあり、カリフォルニア州でライドシェアが合法になった。2013年1月頃にUberXの発表

・UberXによりニューヨークでのメダリオンの価格は2011年には1枚100万ドルだったが、6年後に18.6万ドルになった p190

・中国ではUberは現金やAlipayを含む様々な決済手段に対応したが、スピードが遅かったらしい。テンセント決済は接続できなかった。 p243

・ドライバーのスマートフォンにある加速器ジャイロスコープを使いLyftのアプリ音を検出するプログラムが社内で提案されたが、カラニックはリリースしなかった p304

・2017年にトランプ大統領の移民受け入れ停止に伴いJFK国際空港でタクシードライバーストライキをしたときに、なぜかUberは反感を買い#DeleteUberがトレンドになった。だが、同業他社のLyftは寧ろ好感度をあげた? (消費者の偽善みたいのを少し感じる)

・2017年にUberのVCであるベンチマークがカラニックを訴えた。だが、ソフトバンクが両者から株式を買い取る形で訴訟は取り下げとなった。

・2022年にthe guradianが報道した内容によると、Uberは全世界の政治家と密接な関係を築き違法行為を見逃してもらったり、捜査が入ったときにデータを消す「キルスイッチ」システムを作ったり、タクシー運転手のデモ時に敢えて暴力性を全面に出したりしていた。

 

 

 

 

 

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https://www.bloomberg.com/news/features/2017-10-11/uber-pushed-the-limits-of-the-law-now-comes-the-reckoning

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