全球観察

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書評『ポスト消費社会のゆくえ』

すごく相性の良い二人だなと感じながら読みました。

以前、セゾングループのリゾート開発がダメダメだったという本を読みましたが、その答えがp180~181に書いてありました。というのも、そうしたリゾートはヨーロッパに影響された「長期滞在型施設」であるのに、肝心のセゾングループの社員に対して2週間の有給は「差し上げていない」とのことでした。どうりで、そうした「長期滞在型」は定着しなかったわけです。

堤氏の「突き詰めていけば、適任でない者を経営の責任者に任命しているわけです」(p194)という発言もセゾングループが解体した理由をかなり説明している気がしました。

p65では西武渋谷(1968)や渋谷パルコ(1973)以降渋谷の雰囲気が変わった、とありこれが堤氏の小売による街づくり(後に不良債権化してセゾングループ解体につながる)の原点な気がしました。

p87に西武池袋は商圏エリアが思ったほど拡大しなかった、p250で百貨店ビジネスのオワコン化、を堤氏が指摘していますが、1300億円程度の売上高の西武池袋のコロナ禍での集客力伊勢丹新宿店の2000億円程度の売上高 とかを考慮すると何かずれているなと感じました。
p241で「カルフール」のようなストックヤード型は日本で流行らないとも言っていますが、「コストコ」!!!と読みながら思いました。

 

p118では男女雇用機会均等法を先取りした人事政策を採用していたとありますが、新興百貨店だからこそ本当はもっと色々出来たのではという気もします。社員の働き方の観点からも上記のまちづくりの観点からも、オフィスへの関心がないのも不思議です。

 

無印良品のPBが、「ブランドを無くして良品を低価格」でという当初コンセプトからかなり変節して、アジアの労働者の低賃金依存のSPAみたいになってしまったのはもう少し詳しく知りたかったかもです(p242,p248) 。

もしかしたら堤氏の小売・流通のセンスが思ったほどないのかなとか、ブランドの見極め・記号の操作・ロシアへの洞察・独特の人間的魅力・人的つながり・土地情報の仕入れなどが彼の才能だったのか、などなど思いながら読みました。

 

なお、p75に出てくる高槻の西武八尾の西武 は両方とも閉店していました。