全球観察

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書評『The Power Law』

立ち読みしたときは『ベンチャーキャピタル全史』と大体同じ内容かなと思いましたが、実際に読んでみると少し違った観点や内容でベンチャーキャピタル産業について書いてあり一気に読めました。

 

メモ:

トランジスターは1947年にニュージャージー州ベル研究所(シャノン在籍中?)に生まれた、WWWの初期の仕組みであるGopherミネソタ州で生まれた、最初のブラウザはイリノイ大学の学生だったマークアンドリーセンが開発した、最初の検索エンジンのArchieはモントリオールマギル大学の学生が開発した、最初のSNSはニューヨークから生まれたsixdegrees.comだった、最初のスマートフォンであるSimon Personal CommunicatorフロリダにあるIBM研究所から生まれた (p51)

・MITのような工学系の学術拠点があり、軍事産業も盛んだったボストン地域はシリコンバレーにはならなかった

リサーチパークもハイテク系の雇用創出にあまり意味がない。世界各地のシリコンバレーを作る政策はイスラエル以外ほとんど失敗した。

EUは2001年に20億ユーロのベンチャー投資の助成金を割り当てたが、リミテッドパートナーシップを容認せず、労働規制も見直さなかった。ストックオプションに関する法律も整備しなかった。2020年の改正でフランスやドイツではストックオプション制度が実効性のあるものになった。ベルギーではストックオプションを受け入れた瞬間に18%の税金が掛かる(p371)

・初期のVCであるARDはMITと軍需産業と強いコネがあるドリオ氏が1946年に作った。

・1961年にアーサーロック氏が立ち上げたDavis&Rockはフェアチャイルド社に嫌気が指したサラリーマン数名に資金を提供し、その会社が後のインテルとなった。Davis&RockはARDとは違い株式会社とはならず、適格投資家が100人未満のパートナーシップだったので「1940年投資会社法」の様々な規制の対象外となった。

・セコイアを立ち上げる際にバレンタイン氏は1年半かけて500万ドルを集めた。キャピタルゲイン非課税の大学基金や財団が多かった。フォード財団、イェール大学、バンダービルト大学、ハーバード大学。最初のファンドはアタリなどに投資され、1980年までに年率60%を達成した(p129)

・中国のVC産業はアメリカのVCが影響。ケイマンにある法人を経由して、投資規制を回避。ストックオプションもケイマン法人を使った複雑なスキーム。

・ゴールドマンサックスの中国法人はアリババに投資したかったが、本社が許可せず、孫さんが少し負担することになった。

・孫さんはアメリカのYahooへの巨額投資でもシリコンバレーのVCのルールを変えた。

・クライナー・パーキンスの衰退は雑なマネジメント体制がもたらした (p138)

・1974年エリサ法、1980年バイドール法

 

疑問:

・なぜ新しい学問分野はアメリカから生まれるのか

マンハッタン計画アポロ計画のような巨額科学予算執行やその方法論はどの程度意義があったか

ボーイングNASAマイクロソフトAmazonスターバックスがあるシアトルは何故新興企業の量産体制にならないのか

・政府調達はスタートアップ育成にどの程度貢献したか(ビル・ゲイツの高校時代の交通データ解析 、1977年のオラクルへのCIAの発注etc)

基金はVCをどのように管理しているか

スターバックスへのVCの投資(GRP Partners)などテック系ではない分野でのVCの役割

・VCによる競争回避はケイレツの影響があるか、利益度外視のシェア優先は日本の半導体企業の影響があるか

シリコンバレーの都市計画