非常に印象的な本でした。日本のゲーム理論の本と決定的に違うのは、ゲーム理論をビジネスに活かすというより、ビジネスでどうやってゲームを作っていくかというような点でしょうか。
ゲームを作るとなるとルールを変えるというのが直観的に想起されますが、この本ではPARTS(Player,Added Values,Rules,Tactics,Scope)と様々な手段でゲームを作っていく考え方が紹介されています。特に、印象的だったのは、競争に勝つというよりはゲームに勝つという観点からの様々な競争相手と協調しパイを大きくしようというような視座でしょうか。
任天堂がアメリカで浸透した戦略、セガの「柔道戦略(16ビットコンソールの値段を高くして、任天堂を8ビットコンソール市場に傾斜させた)」、その他自動車企業など日本企業が結構出てくるのも興味深いです。
1997年に出版されたこうした「パイを大きくする」ような本が日本であまり流行せず、どちらかというと競争に勝つ・コストカット競争・ゼロサムゲームへの突入・社会全体のデフレというような展開になってしまったのは、第二次大戦後の日本のベビーブーム世代の極貧の戦後体験が影響しているのでしょうか。
amazon.comのジェフ・ベゾスがCustomer Obsession(顧客中心主義)を強調し競合が何をしているかを気にする必要が無い、というような考えを形成した背景にはこういう本があったのだろうと思いました。