全球観察

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書評『土地と日本人』

司馬遼太郎さんがここまで土地公有化論者だったとは知らず、結構びっくりしました。

日本の近世史を土地所有の観点から学びなおしたくなりました。

 

・江戸時代、大名や武士は土地を大量所有していなかった。百姓や町人(e.g 紀伊國屋文左衛門,淀屋辰五郎)が土地を大量所有していた。大名は徴税権を持っていた。ヨーロッパでは貴族が土地所有権を持っていた(p39)
・土地を抵当にする銀行貸出は日本特有の可能性 (p53)

・近代的な所有権とはやや違うが、領主に税金を払うが、ここは自分の土地だと所有権を主張する「一所懸命意識」(p76)

・鎌倉政権は司法だけが機能といっていい政権 (p91)

太閤検地も戦後の農地解放も日本の国土面積の2~3割が対象。大部分の山林が放置されている。だが、その山林が、宅地化、工業化、道路、鉄道利用などで価格がおかしくなっている (p165)

 

石井紫郎氏:

・土地を自由に売買できる、土地を抵当に出来るのは土地所有の近代化。江戸時代には「頼納」や「高抜売買」の禁止令があった。土地の売買は自由だが、担税力の観点から年貢担当者の確定は厳格。

・近世ヨーロッパやアメリカでは、新しい税金や税金の利用方法が政治権力史のトピックだが、日本では年貢がどのように利用されるかを議論したことはない (p63,p77)

・近世ヨーロッパでは私領には税金は掛からない。プロイセンでは1861年から貴族の世襲私有地に税金が掛かるようになった

・カントは土地所有は共同所有が原則で、個人所有はその一部であると考えていた (p102)

後三条天皇から後白河法皇のころに、土地造成をするような律令国家から租税権だけの国家になった。
律令国家時代は、鉄器を所有する豪族と貸与される百姓の主従関係があった (p80)

明治維新以降の内閣は、天皇の権威を借りることが出来ず、政党政治がドイツよりも早く展開された (p111)

 

野坂昭如氏:
・農地解放で百姓が土地を大事にしなくなった (p40,p265)

 

ぬやまひろし氏:

天明の打ちこわしにしろ秩父国民党にしろ農民の暴動で「土地を農民によこせ」のような主張は無かった (p176)

国鉄の赤字は用地買収費。だが、労働組合から土地に関する要求は無かった (p189)

 

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