全球観察

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書評「起業の天才」

結構面白い本でした。

独特の強い営業組織がどのように形成されてきたのか知りたく読みましたが、AWS/GCPのようなコンピューティングリソースの時間貸し(そのために作った川崎市テクノピアに関する疑惑が「リクルート事件」の発端)やGoogle Mapsのような事業を日経新聞としていたりJONという不動産仲介業者間のネットワークシステム構築をしていたりと、色々知らないことがありました。

というか、江副さん自身は紙の時代は終わると思っていたようで、ザ・リクルート的なフリーペーパーの配布的なビジネスにはあまり興味を持っていなかったようなのが結構意外で面白かったです。この辺がリクルートの亜流のような営業組織で頑張る企業との大きな違いな気がします。とはいえ、ダイヤモンド社読売新聞社の求人市場/不動産市場参戦にも関わらず、競争に勝つ過程の描写も面白かったです。

いずれにせよ、そうした江副さんのデジタル構想は当時の日本ではほとんど開花することもありませんでした。
ちなみに、JONは1983年に開始されましたたが、結局当時のネットワーク通信速度があまりにも遅くFAXの方が良いとなり、1987年にサービス停止となったようです。こんなところにも不動産業=FAXのヘビーユーザーの隠れた歴史があったりするようです。

 

巨大NTTがAT&Tのように分割されなかったのが日本でGAFAが生まれなかった説のようなものが垣間見られるのですが、それはどうなのでしょうかね。確かに、上記のリクルートのサービスや元リクルート社員がNTTで作ったiPhoneの先駆のようなiモードを始めとして、1980~1990年代の日本には今のGAFAのようなサービスがあったのは間違いないと思いますが。

 

リクルート事件」の検察の雑な取り調べもいかがなものかという気もします。
ただ、求人にしろ不動産にしろリクルートが関与することで情報の流通が良くなるというより寧ろおかしくなるような感覚を今生きる自分も感じることがあるので、当時の社会の多くの方のモヤモヤとした違和感も強かったのかも知れません。