全球観察

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カミュの『異邦人』読んだ

カミュの『異邦人』読んだ。多分15年ぶりぐらいに。

意外だったのは、主人公の感覚や行動は思っていたよりも正常なのではと思ったことだ。

唯一異常だと思われるのは、死にかけているアラブ系アルジェリア人に対して3発も銃を撃ったことだろうか。一方で、これが本当に異常なのかは、「正当防衛」の解釈にもよるだろう。
ただ、物語(のなかの裁判)は、そうした法的な事実関係の整理というよりは、「母親が死んだときに悲しまなかったこと」「葬式の翌日にビーチに行きデートしていたこと」などを関連付けて、主人公の異常性を前提として進めようとしている。そして、主人公には死刑が言い渡される。
この本が書かれた1940年代ならば、確かに、そうした物語の進み方も納得感があったのだろうが、現代に冷静に読むと司法制度がもっとしっかりしたほうが良いのではと思う人も少なくないではと感じた(被植民地側の人間に対する植民地側の人間の殺人をしっかりと裁いているという見方もあるかもだが)。

物語の進め方に若干の違和感はあったものの、自分が行なった行為が第三者に全く予期しない観点から解釈されて、自分が想定していない人生の条件が生まれてしまうような「不条理」の表現は悪くないと思った。
とはいえ、このような第三者の解釈がときとして全く予期できないことをもって、他者との不理解性のようなことを強調するならば、少なくとも司法制度の手続保障の描写がもう少し必要だったのではないだろうか。有名な「太陽のせい」という主人公の言葉も寧ろ当時の司法制度への諦めのようにも思えた。