全球観察

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ルールと資本主義

とてもおもしろい本だった。

現在の資本主義の問題点や資本主義の成立に於けるルールの重要性をとても強く感じた。そして多くのルールを改正し公平なものにすることで資本主義はより良いものになるという筆者の主張に同感だ。

 

最後の資本主義

最後の資本主義

 

 

要旨的なもの↓

ルールとは「所有権」「独占」「契約」「破産」「執行」の5つだ。

ルールが変更したことで私達の経済活動はこの数十年間で大きく変わってしまった。

例えば、1980年代から「株主のための」企業を主張しLBOなどを多用した乗っ取り屋が誕生したのは1974年のエリサ法により年金基金等が債券だけでなく株式にも投資可能にルールが変更されたこと背景がある。それまでは全てのステークホールダーに配慮する経営が主流だったのに。

また、取締役の所得が増加するのに従業員の給与はあまり増加しないこともそうしたルールの変更で説明できるという。前者は1982年に自社株買いへの規制が撤廃され1991 年のSECの決定や1993年のクリントン政権の税制改革でストック・オプションがより魅力的になったこと等で後者はWTOへの加盟などで国際的な労働市場に組み込まれたことや労働組合への参加率が減り従業員の交渉力が低下したこと等だ。

従業員の給与に関しては企業に有利な契約や独禁法の運用で、企業に有利な契約を一方的に押し付けられて実質的に購買力が逓減している側面もある。

また、学費ローンや住宅ローンは破産の対象にならなくなってしまったり、法律を執行する組織への予算を少なくしたり法律に様々な抜け穴を作るなどで法の執行を阻害している例が多数ある。

 

だからこそルールをより良いものに変更すれば良いのだ。

Facebookなどのネットワーク効果も新しい独占として独禁法を積極的に適用するべきだし、従業員持株会に税制上の優遇を認め従業員にも会社のオーナーシップを積極的に与えたり、ベーシックインカムを導入する(個人的には市民権を証券化するなどして市場で売買可能なものにし何らかの配当や利子が付くような制度設計も面白いと思う)etc。。。。

 

 

BSは15Cのベネチアで生まれたものであり、信用サイクルも誰かの債務が無ければ経済が成立しないので恐らく人類社会誕生頃からあったのだろう。

それでは私達が日々生きている資本主義社会の特殊性とは何か。それは経済活動を支えるルールだ。例えば、「法人」「株式」「債券」「登記」「担保」「金融市場」etcの概念や民法や商法などの法体系であったりそれらの運用だ。

そういう意味で人類史の信用サイクルとルールのなかでの現在の経済システムを理解したいと思った。

 

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また今後強化学習が発展したり国際労働市場がより統一されたものになるのだろうけれども、ルールを作る能力や理解する能力はどのような局面でも重要な能力なのだろう。

正直日本の立法府の立法過程はイマイチ不透明だ。全ての審議会が公開されているわけではない、審議会の資料もあったりなかったり、委員会の日程が前日にならないと公開されない、事前通告の内容や審議に使用した資料は共有されない、議事録/質問主意書が読みにくいetc。予算も国会に提出される各目明細書の内容が良く分からない、特別会計が良く分からない、公会計の基準が良く分からない、事後の議事録の検索もなかなか難しかったり読みにくいetc

まあ、自分の清き一票の力など知れているが、自分の生活圏でルールがどのように変更されていくがどのような力学があるのかは今まで以上に注視して行きたい。

国際的な標準やルールもどのように決まるのか。あと、同じような民事の事件で海外の判例が国内の判決にどれほど影響あるかとかも興味深い。国連は一種の行政府だと思うけれども、国際社会に立法府は必要ないのだろうか。案外BEPSなど国際的な税金の枠組みから新しい国際的司法の枠組みが生まれたりするかもしれない。

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