全球観察

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スコットランドは独立すると思う

今年(2014年)の楽しみは何といっても9月18日に行われる「スコットランド独立」の是非を問う住民投票だ。

その結果を巡っては様々な観測記事が出始めていて(Top fund manager: Scotland vote already hurting investors - Telegraphなど)、いろいろと議論されている。

私はスコットランドは独立すると思う。そしてそれはある小さな島国での出来事ではなく、同時多発的に全世界の人々の意識に「時代」を感じさせるだろう、と思う。

何故スコットランドはBritainから独立するのか?

というのも、トートロジーのようだが「スコットランド独立」が政治的アジェンダになっているからだ。私が初めて「スコットランド独立」に関する話題を知ったのはThe Economistの2007年の記事"Scottish Independence:A debatable resolution"(http://www.economist.com/node/9653101)であるが、それ以降の7年間はこの問題に関して何か不可逆な歴史の流れとでも言うべきものを感じている。年金などの社会保障・経済力などを考えるとBritainに留まることが合理的であるのかもしれないが、選挙前に「スコットランド独立」を支持する人は徐々に増えているようだ。「沖縄独立」を支持する人は存在するかもしれないが、それは政治的アジェンダではなく今のところ彼らを無視していても何も政治空間に痛みはない。

逆の問いかけとして、Britain人として誇りを感じるスコットランド人やBritain内の政治・経済システムに組み込まれていることに利益を感じるスコットランド人はどれ程いるのだろうか、と考えた時に、300年間の悲願のチャンスである「スコットランド独立」住民投票(今回が初めてではない)は合理的な経済的観点と同時に住民のプライド・誇りという観点から見るべきなのではないか、と思う。ここまで「スコットランド独立」が政治的アジェンダになっているのも、一人あたりGDPがBritain内の他地域と変わらない経済力を得たこともあり、独立が現実的な選択肢となっているからだと思う。それ故に、「スコットランド独立」を政治的アジェンダから取り除くには「スコットランド独立」以外にもはや方法が無いのではないか。

 

もし9月に「スコットランド独立」が決定した場合。「バン!」というよりも静かに国家が分裂した場合

国家はこんなに簡単に再編成できるのか、と感じざるを得ないであろう。そして全世界の人々に国家とは自分たちにとり何なのかを強く再考するきっかけとなるだろう。経済的・軍事的に無理してまで大国であろうとする試みが空しくなるだろう。共同体を自分たちにとり最適化させていこうという試みが強くなるだろう。

もちろん「スコットランド独立」は単なる300年間続いたある島国国家の解体にしか過ぎない。しかし、それは世界史的意義を持つと予想したい。たしかに、油田の発掘がスコットランドにとっての経済的自立やBritain内での不公平な立場の再認識の契機になったかもしれないが、より重要なことはここ数十年間の間に人々の意識が大きく変わり、既存の国境線では利益の再分配が最適化されにくくなっている条件が強く存在しているからだ。

短期的には、スペインのバスクカタルーニャ地方や日本の沖縄地方を始めとした地域の独立意識を高めるかもしれないが、それ以上に土地の再定義とでも言うべき長い期間にわたる地域の再編成が始まるのではないかと思う。そしてそれはかつての「スコットランド啓蒙派」のような、理想の社会・国家を作る試みに、多くの人々が積極的に関与していくような時代になることも意味するのだと思う。