全球観察

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憲法9条と国連憲章51条と曖昧で灰色な何か

日本国憲法9条は正直意味あるのかなと思う。国連憲章51条が規定するように現在の国際安全保障は集団的安全保障体制であり、日本が単独で国際紛争を解決する手段として武力行使を行うことはほぼ不可能であるし、また同時に現実として様々な多元的外交チャネルが発達しているなかで武力行使を行う必要性もかなり低い。
勿論集団的自衛権を日本国が有しているかは微妙なところだったが、数年前の安保法制時以来内閣は日本国が集団的自衛権を有しているという立場をとることになったわけでますます個別的自衛権は有することではほぼ合意がある日本国憲法9条自体があってもなくても現実の法運用はあまり変わらないのではないかという疑惑は強まっている。
強いて言うならば、予算のシーリングなどに於ける必要最低限の防衛という基準であったりこうした条文が敢えて存在することで安全保障関連の法運用は限定的になることを想起させていることだろうか。

いずれにせよ最近の防衛省を始めとする行政府の情報公開や情報保持の姿勢を見ているとそういう意味では確かにこの条文は存在しても良いのではないかなと思うようになった。行政府の事務方の「適切に対応」「記憶にございません」がここまで許容されてしまういい加減な立法府の議論を聞いていると、常に必要以上のブレーキを掛けておかないと何が行われるかが不安になってくる。

よくよく考えてみると日本は核保有国ではないといえ現実にはアメリカの核の傘に守られている。これは確かに偽善のようだが、日本国が核を有することと、アメリカの核を日本に持ってくる条件交渉だとどちらのほうがよりコントロールできるのだろうか。また、モンゴルのように中ロに囲まれても自国軍で対応していたり、ドイツなどのように形式的にはNATO軍にしたりという点を鑑みても在日米軍に対する条件はかなり良いのではないだろうか。
そういう意味で憲法9条は、勿論「戦争反対」的な庶民感情に由来するとは言え、日本の立法府の議論の水準では単独でシビリアンコントロールを実現することがかなり難しいという認識も相当程度反映されているのではないか。そして定期的に内外に対して単独で武力行使を行わないことを強調するとともに、米軍に一種のシビリアンコントロール的任務も担ってもらうことも想定しているのではないか。

そんなことをふと思ったので当時の議論を読んだりしてみよう。

大統領令と司法府

イスラム教圏を中心とする7ヶ国からの移民/難民を米国に入国させない米国大統領令が発布された。

www.whitehouse.gov

 

移民の国アメリカの理念の保持という観点から多くの反対を招いたが、同時に世論調査では半数程度の米国民の賛成がみられた。

 

そもそも論としてこれほどの移民や難民が発生していることが問題なのだと思う。特にシリア内戦に由来する難民の発生に対してはオバマ政権の不作為を指摘する論調があったが、米国の納税者が他国/他地域の不作為の責任を取る必要はないと思う。

 

国連などの国際機関が適切に機能していないこともこうした人の不本意な移動の原因だと思うので、そうした国際機関にはもう少し民主的統制が効くようにガバナンスを変えていくべきではないのか。

 

トランプ氏はこうした点を指摘すればある程度反対論を緩和できた気がするが、何故言わなかったのだろう。こうしたパフォーマンスのかげで本当に追求したい利益があるのだろうか。例えば、今後の三権分立の運用のなかでの行政府の優位の既成事実化とか。

 

いずれにせよ、司法府はこの大統領令に差し止め命令を出してそれは全米で効力を発した。結局この大統領令の効力は司法闘争にて争われることになるようだ。

http://online.wsj.com/public/resources/documents/2017_2003_robart_tro_ruling.pdf

 

しかし、こうした司法府の強力な権限も相当程度独裁的でもあり非民主的な印象がある。連邦最高裁まで行った場合、判事である9人がこの大統領令の効力を決定することになるが残りの3億人の国民の参政権はかなり希薄化される。特にたまたま昨年そのうちの1人が亡くなっていることがその決定過程の偶発性や政治性を高めている。国論が二分される問題が常に司法に掛けられ、行政府と司法府が異なる意見を支持するねじれは寧ろ国内を分断させるのではないだろうか。

 

やはり大統領令を差し止めるとしても、選挙の洗礼を受けた立法府がするべきなのではないのだろうか。そして下院議長のライアン氏が特に反対しているわけでもないのし恐らく立法府はオッケーを出しているので、この大統領令は運用するのが妥当だと思う。

jp.wsj.com

 

まだ閉鎖はされていないが、グアンタナモ収容所を閉鎖するのも大統領令のようなので、司法府に過度の期待をするのもどうかと思う。グアンタナモ収容所に大して司法府は何らかのアクションを今までしてきたのだろうか。今回の大統領令に突然反応したことで米国司法の予測可能性の逓減というか恣意的な運用を感じたのは僕だけなのだろうか。

www.huffingtonpost.jp

世界秩序へのリスクに彼の死も追加して下さい

中央アジアウズベキスタンのカリモフ大統領が死亡したようだ。彼亡き後の権力の空白がどのように解決するのか、類似の事態は他の地域の独裁国家でも発生するのではないか、など世界秩序に新たな不確実性が生まれたようだ。資源価格の乱高下、テロの多発、中国とロシアが対立したり、新たなイスラム国家もしくは国家もどきが出来たり、今のところの想定できる最悪なシナリオはそんなところだろうか。

www.nikkei.com

もう一人世界が忘れていると思われる不確実性があるように思う。アルジェリアの大統領アブデルアジズ・ブーテフリカ氏の死だ。最近のリビア空爆などでイスラム国が活動範囲を縮小しているようだが、アルジェリアの権力が不安定化した場合に彼らは新たなそしてより強固な拠点をアルジェリアに獲得出来るかもしれない。